息子の試合で、対戦チームのコーチが怒鳴り続けていた。
ワンプレーごとにダメ出しが入る。子どもをベンチに呼び出して怒る。泣かせる。話を聞けない子は交代させて「聞けない奴は出るな」と言う。
私はその日、息子のチームのヘッドコーチとして、本部テントを挟んだ隣にいた。声がはっきり聞こえる距離だった。
怒りがあった。モヤモヤがあった。そして、自戒もあった。
この記事は、あの日から続いている「答えの出ない問い」を正直に書いたものです。子どものサッカーに関わる保護者の方に、一緒に考えてもらえたら、と思っています。
あのコーチのことを、私は昔から知っている
そのコーチとは、私が指導を始めた頃からの知り合いだ。
20年以上前から、やり方は変わっていない。当時から、ずっと違和感があった。
ただ、その人はこの地域のサッカーを長年支えてきた人物でもある。市のサッカー協会の重鎮で、大会本部やトレセン活動にも深く関わっている。周囲がなかなか声を上げられない空気があることは、なんとなく感じている。
だから、誰も何も言わない。ずっとそのままだ。
試合中に見えたもの
怒鳴り声は、試合が始まった直後から続いた。
ミスをするたびに名前を呼ばれ、ベンチに戻される。コーチの言葉を受けて、子どもの表情が変わっていく。肩が落ちる。うつむく。次のプレーが怖くなる、という顔になる。
泣いている子もいた。
「聞けない奴は出るな」
その言葉が聞こえた時、私は何も言えなかった。本部テントを挟んだ隣にいながら、ただ見ていた。
隣にいたからこそ、見えすぎた。
怒りの中にあった、自戒
正直に書く。
私にもあの感覚がないとは言えない。
指示が通らない時、同じことを何度も繰り返してしまう子どもに、語気が強くなったことはある。「なんでわからないんだ」と思ったことも、ある。
指導者として関わり続けていると、気づかないうちに「自分が正しい」という立場に立っていることがある。経験が長いほど、その傾向は強まりやすい。
あのコーチだけの話ではないかもしれない。と、自分に言い聞かせながら、それでも、あの光景が頭から離れなかった。
答えが出ない理由
一方で、こんな考えも頭をよぎった。
厳しい指導が、子どものストレス耐性をつくる可能性はあるのか。怒鳴られ続けることで、社会で戦える強さが育まれる、という見方も、完全には否定できないのではないか。
教育に答えはない。あの時の指導が何をもたらしたか、10年後に検証することもできない。
だから、モヤモヤは簡単には晴れない。
ただ、私が見てきた子どもたちの経験からひとつだけ言えることがある。
安心できない場所では、人は本来の力を出しにくい。
怒鳴られることで萎縮した子どもは、ミスを恐れてプレーする。ミスを恐れてプレーする子どもは、挑戦をしなくなる。挑戦しない子どもは、成長の機会を失う。
技術は上達するかもしれない。しかし、その子の中に何が積み重なっていくのか。それを考えると、すっきりとは割り切れなかった。
その子たちが、いつか息子のチームに来るかもしれない
この地域で育った子どもたちは、ジュニアユース年代で同じチームになることがある。
あのコーチのもとで育った子どもが、いつか息子と同じチームに入る。そういうことが、実際に起こりうる。
不登校支援の活動をしている中で、子どもを取り巻く環境の変化を感じている。家に帰りたくないと言って夜遅くまで外にいる子ども。コンビニの前でたむろする子ども。息苦しさが、あちこちに見える。
そういう子どもたちの背景に、どんな経験が積み重なっているのか。
断言はできない。ただ、サッカーを通して「愛を感じられなかった」という経験が、何かに影響している可能性は、否定できないと思っている。
自分に何ができるか、まだ答えは出ていない
あの試合から、ずっと考えている。
あのコーチを変えることは、私にはできない。何十年も続いてきたやり方を、誰かの言葉で変えることは難しい。
ただ、自分が関わる子どもたちに対して、自分はどうあるか。それだけは、自分で選べる。
安心できる場所をつくること。失敗しても次があると思える空気をつくること。怒鳴らなくても伝わる言葉を、考え続けること。
それが正解かどうかは、わからない。
でも、「あの日のモヤモヤ」を持ち続けることが、自分を点検し続ける材料になっている気がしている。
まとめ
この記事で伝えたかったことを、整理します。
怒鳴るコーチを批判したかったわけではありません。あの光景を見て動いた感情を、そのまま書きました。
指導に答えはない。それは本当だと思っています。ただ、「答えがないから何でもいい」ではないとも思っています。
子どもがサッカーを通して何を経験するか。技術だけでなく、その場所でどんな気持ちを積み重ねるか。関わる大人が持ち続けるべき問いがあるとしたら、そこかもしれません。
あのコーチが間違っているとも、正しいとも、私には言えません。ただ私は、あの日の怒りとモヤモヤと自戒を、忘れないでいようと思っています。
あなたのお子さんが関わるチームの環境は、どんなものですか。
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