試合後に厳しい言葉が出てしまうのは、愛情が強いからではないと思っています。
私は昔、熱を出しながら子どもたちの試合に行った日に、「コーチのテンションが低いと、子どもは気持ちを作れない」と言われたことがあります。そのとき自分が見ていたのは、子どもではなく、自分が頑張ったことでした。
この記事では、親が試合後についきつくなってしまう仕組みと、その手前で止まるための方法を書きます。言ったあとで自己嫌悪になっている方に向けた内容です。
「怒りたくて言っているわけじゃない」
試合の帰り道、言うつもりのなかったことを言ってしまった。家に着いてから、なんであんな言い方をしたんだろうと思う。
そういう経験のある方は、たぶん多いと思います。
大事なのは、その人が厳しい人だからではない、ということです。怒りたくて怒っている親を、私は現場でほとんど見たことがありません。ほぼ全員が、言ったあとに後悔しています。
だとしたら、原因は性格ではなく、仕組みの側にあります。
親だって、試合を本気で戦っている
見落とされがちですが、試合の日は親にとっても長い一日です。
朝早く起きて、お弁当を作って、洗濯物を片付けて、車を出して、会場に着いたら暑い中か寒い中でずっと立って見ている。合間に下の子の相手もする。
その間、ずっと集中しています。プレーの一つひとつに反応して、心の中で一緒に走っています。
つまり親も、その日は本気で戦っています。だから試合が終わった瞬間、疲労と感情が同時にピークに来ます。冷静な言葉が出にくい状態に、体のほうがなっています。
熱を出して試合に行った日に、言われた言葉
私が大学生の頃、少年チームで指導をしていました。
担当していた子たちの試合の日、熱を出しました。それでも責任感があって、無理をして行きました。
今思えば、心のどこかで期待していたと思います。「体調が悪いのに来てくれてありがとう」と言われるんじゃないか、と。
でも、返ってきたのは違う言葉でした。
「コーチのテンションが低いと、子どもは気持ちを作れない」
その場でハッとしました。
自分が見ていたのは、自分が頑張ったことでした。大事なのは、子どもがどう感じるかだったのに。
試合後に厳しい言葉が出てしまうときも、たぶん似たことが起きています。朝早く起きて、お弁当を作って、遠くまで運転して、暑い中ずっと立って見ていた。その一日が、無意識のうちに「これだけやったのに」に変わる。
自分が頑張ったぶんを、子どもの結果で受け取ろうとしてしまう。あの日の自分がやっていたのは、そういうことでした。
「期待」が大きいほど、言葉は強くなる
期待そのものは悪いものではありません。期待されていない子より、されている子のほうが伸びる場面もあります。
ただ、期待には副作用があります。
期待が大きいほど、思った通りにいかなかったときの落差が大きくなります。そして落差が大きいほど、出てくる言葉は強くなります。
「なんであそこでパスしなかったの」の裏側にあるのは、たいてい怒りではありません。落差です。
「ちゃんと育てなきゃ」が、親を追い込む
もう一つ、親を厳しくさせるものがあります。
「ちゃんと育てなきゃいけない」という気持ちです。
ここで言わなかったら甘やかしになるんじゃないか。他の家はもっと厳しく言っているんじゃないか。自分が言わなかったせいで、この子が伸びなかったらどうしよう。
責任感が強い人ほど、この考えにつかまります。そして、その責任感が、試合後の言葉をきつくします。
厳しく言ってしまう親は、無責任な親ではありません。むしろ逆のことが多いです。
「言わない=放置」ではありません
ここで誤解が生まれやすいので、はっきり書いておきます。
何も言わないことは、放っておくことではありません。
子どもは、言葉がなくても親の様子を見ています。試合のあとに普通にご飯を食べて、普通に話す。それだけで「今日のことは、この家では大ごとじゃない」と伝わります。
言葉を減らすのは、関心を減らすことではありません。むしろ、そのほうが強く伝わる場面があります。
試合後、親に必要なのは「正解」より「安心感」
では、何を言えばいいのか。
正解の一言を探し始めると、たいてい苦しくなります。場面によって正解は変わりますし、その日の子どもの状態でも変わります。
それより、家がどういう場所かのほうが効きます。
負けても、ミスをしても、ここに帰ってくれば普段どおりでいられる。そう思えている子は、次の週も普通にグラウンドへ行きます。
手前で止まるための、3つの方法
1. 車に乗って最初の5分は、サッカーの話をしない
一番言葉がきつくなるのは、感情がピークにある試合直後です。その5分をやり過ごすだけで、出てくる言葉がかなり変わります。お腹すいた、暑かったね、その程度の話で構いません。
2. 話すなら、翌日にする
振り返り自体は大事です。ただ、タイミングを移すだけで、同じ内容が別のものとして届きます。翌日、本人が話したそうにしている時が一番入ります。
3. 言いたくなったら、自分の一日を思い出す
「これだけやったのに」が出かかったとき、それは子どもの話ではなく自分の疲れの話かもしれません。そう気づけるだけで、一回は止まれます。
言ってしまった日は、それでいい
試合後に厳しくなるのは、性格の問題ではありません。その日、親も本気で一日を使っているからです。期待が大きいほど落差が生まれ、責任感が強いほど「言わなきゃ」と思う。仕組みとしては、そうなっています。
仕組みが分かると、少しだけ手前で止まれます。止まれなかった日があっても、次の日に戻せます。
私も、あの指摘を受けるまで気づいていませんでした。見ていたのは相手ではなく、自分のほうでした。指導者として何年もやっていて、それです。
もし今日、言いすぎたと思っているなら、謝らなくても大丈夫です。次に顔を合わせたとき、サッカーと関係のない話を一つするだけでいいと思います。子どもが覚えているのは、言われた内容より、そのあとの空気のほうです。
厳しくしてしまう自分を、責めなくていいと思います。
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