私には、声をかけ続けられなかった子がいます。いつも私に話しかけてきた子でした。最初は受け止められたのに、途中で疲れてしまい、距離を取りました。その子はチームを辞めました。
ミスをした子に何と言えばいいのか。正解を探している方は多いと思います。ただ、私が現場で痛感したのは、言葉の中身より前に別の問題があるということでした。
この記事では、ミスした日の声のかけ方を、うまくやれなかった側から書きます。
ミスをした日こそ、ミスにフォーカスしない
先に結論を書くと、親が「ミス」に注目しすぎないことが大切です。
理由は単純で、子ども本人が一番そのミスを気にしているからです。
パスミスで失点した。PKを外した。決定機を逃した。そういう場面は、本人の頭の中で何度も再生されています。
そこへ親が「あそこはこうすれば良かったね」「なんであんなミスしたの?」と重ねると、傷口に塩を塗ることになります。
むしろ効くのは、「お疲れさま」「頑張ってたね」という、いつも通りの言葉です。ミスを特別扱いしない。それが結果的に子どもを救うことがあります。
気にしているということは、アンテナが立っている
ミスを放っておいていい、と言いたいわけではありません。
実は、子どもが落ち込んでいる状態は、成長のチャンスでもあります。気にしている、ということはアンテナが立っている状態だからです。
なぜボールを失ったのか。なぜ判断を間違えたのか。なぜ失点につながったのか。本人は無意識に考え始めています。
大人が教え込まなくても、子どもは学びます。特にサッカーが好きな子ほど、「次は失敗したくない」という気持ちから自然と伸びていきます。
親が慌てて指導者になる必要はありません。
声をかけ続けられなかった子のこと
以前、人数の調整で私の担当する学年に繰り上がってきた5人の中に、友達とのコミュニケーションが苦手な子がいました。周りから少し距離を置かれていました。
その子は、いつも私に話しかけてきました。
最初のうちは、一緒にボールを蹴りました。話も聞きました。この子にとって安心できる場所になろう、と思っていました。
でも、時間がたつにつれて、疲れを感じるようになりました。前のように受け止めきれなくなって、少しずつ距離を取るようになりました。
そのあと、彼はチームを辞めました。
自分のせいだと思いました。今でも、そう思っています。
このことがあってから、声のかけ方について考えるとき、順番が変わりました。
どんな言葉をかけるかより先に、その言葉を明日もかけられるかどうか。正解の一言を1つ知っていることより、同じ距離で居続けられることのほうが、たぶん子どもには効きます。
一度うまく言えた日より、うまく言えなくても隣にいた日のほうが、あとから残るような気がしています。
親の役割は、成長を促すことではなく邪魔をしないこと
意外に感じるかもしれませんが、親はつい「成長させなきゃ」と思いがちです。
でも本当に大事なのは、成長の邪魔をしないことのほうです。
そのために避けたいのが、次のような声かけです。
不安を足す言葉
また同じミスするぞ。レギュラー外されるかもね。コーチに怒られるぞ。
後悔を強める言葉
あそこでパスしていれば。なぜ打たなかったの。あれが勝敗を分けたね。
子どもは、すでに十分反省しています。そこへ不安や後悔を上乗せしても、増えるのは苦しさだけです。
親に求められているのは、「大丈夫だよ」という安心感のほうです。安心できる場所があるから、次の挑戦ができます。
振り返りは大事。ただしタイミングが命
では、ミスについて一切話さなくていいのかというと、そうではありません。振り返りはとても大事です。
ただ、タイミングを間違えると届きません。
避けたいタイミング
試合直後。帰りの車内。感情が高ぶっている時。この状態では冷静な話し合いになりませんし、親の言葉も入りません。
入りやすいタイミング
夜ご飯を食べた後。翌日。本人が話したそうにしている時。
「昨日の試合、どう思った?」と聞くだけで十分です。ここで大事なのは、親が答えを教えることではなく、子ども自身に考えさせること。自分で気づいたことは、教わったことより強く残ります。
明日も、同じ距離でいられるかどうか
ミスをした日にかける言葉は、正解を1つ持っている必要はありません。必要なのは、見ていたことが伝わることと、明日も同じ距離でいられることです。
そう考えると、少し気が楽になります。完璧な一言を探さなくてよくなるからです。
私は、一度うまく声をかけられた日より、うまく言えなかったけれど隣にいた日のほうが、子どもに残っていたと感じています。辞めていったあの子に足りなかったのは、言葉ではなく、続けられなかった距離のほうでした。
今日、お子さんがミスをして帰ってきたら、何も言わずに一緒にご飯を食べるだけでもいいと思います。話したくなったら、向こうから話します。
かけ続けられる言葉を、一つだけ持っておいてください。
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