子どもがサッカーをしている今、本当に大切にすべきことは何なのか。
技術を磨くことか、試合に勝つことか、上のチームを目指すことか。目の前の結果を追いかけているうちに、一番大事なことを見失っていないか。そんな問いを持っている方に向けて書きました。
25年以上の指導と、我が家や教え子たちの具体的な姿から、ジュニア年代で本当に大切なことをお伝えします。
ジュニア年代で大切とされる4つ
まず、よく言われることを整理します。
- ゴールデンエイジと呼ばれるこの時期に、ボール扱いの基礎を固めること
- 何より、サッカーを楽しみ、好きになること
- 目先の勝利より、長期的な成長を優先すること
- 指示待ちではなく、自分で判断してプレーする力を育てること
どれも大切です。ただ、私がこれらの根っこで一番大切にしていることは、もう少し大きな話です。
サッカーは、社会の縮図
これは私が最初に思いついた言葉ではありません。
以前、スポーツ心理学の勉強会で、辻秀一先生(「スラムダンク勝利学」の著者)から聞いた考え方です。サッカーは社会の縮図だ、と。
聞いたとき、自分の実感とも重なりました。自分が経験してきた社会も、本質が見えづらく、大人の都合や会社の都合が複雑に絡み合っていたように思います。サッカーも、同じなのだと感じました。
サッカーの中には、社会で起きることのほとんどが詰まっています。仲間と協力すること。意見がぶつかること。役割を分担すること。うまくいかない時に工夫すること。勝つ喜びと、負ける悔しさ。理不尽なことも起きるし、努力が報われないこともあります。
一つのピッチの上で、子どもたちは、社会で経験することの縮図を、繰り返し体験しています。
だから私は、サッカーは社会で生きる力、すなわち社会力を身につけられるスポーツだと考えるようになりました。ジュニア年代で本当に大切なのは、うまくなることそのものより、サッカーを通してこの「社会で生きる力」を育てることだと思っています。
技術は、その手段でもある
こう言うと、「じゃあ技術はどうでもいいのか」と思われるかもしれません。そうではありません。
技術を身につける過程そのものが、社会で生きる力を育てます。ここで、二つの場面を紹介します。
一つ目は、息子の話です。息子は4月まで、ゴールキックやフリーキックといったプレースキックが、全く飛びませんでした。トレセンに入っていながら、チャンスの場面で蹴れないことを、本人も悔しがっていました。
一緒に練習し、具体的な蹴り方を伝えましたが、なかなか上達しませんでした。キックは本人の感覚が大きく関わる部分だと感じ、同級生の言葉や刺激のほうが効くかもしれないと思い、あえて任せることにしました。本人なりに練習を続けた結果、2ヶ月ほどでキックは見違えるように上達しました。
二つ目は、同級生の子の話です。サッカーを始めたばかりで、気さくで熱心な子でしたが、試合に出られないことが多くありました。周りからは「絶対に上手くなる」と言われていましたが、本人はなかなか信じられずにいました。
しばらくすると、試合でも力を発揮できるようになり、自分でも上手くなることを信じられるようになりました。そこから、毎朝30分のボールタッチ練習を続けています。
できないことに向き合う。工夫する。信じきれなくても続ける。うまくなった喜びを味わう。この過程そのものが、技術以上のものを子どもに与えていると感じています。
でも、それは「願望」であって、ゴールではない
ここで、正直に言っておきたいことがあります。
「サッカーで社会力が身につけばいい」というのは、私の願望であって、ゴールではありません。
サッカーをやったから必ず社会力が身につく、というものでもありません。子どもによって、得るものは違います。サッカーから離れて、別の場所で育つ子もいます。それでいいのです。
指導を始めた頃に教えていた子が、2年ほどでサッカーを辞めたことがありました。その後、ダンスに熱中し、海外に行くほどのめり込みました。今はダンスの先生をしています。
サッカーに社会の縮図を見て、社会力が育つことを願っているのは事実です。でも、それを子どもに押し付けるつもりはありません。あくまで、そうなればいいな、という願いです。
本当のゴールは、「自分らしく生きる」こと
では、本当に大切にしたいゴールは何か。
自分らしさとは何かを問い、自分らしく生きてくれること。それに尽きます。
体も小さく、足も速くない子がいました。他の習い事と両立しながらサッカーを続け、6年生になった頃から、他の子とは違うプレーを狙うようになりました。自分のペースで楽しみながら、他の習い事でも自分の良さを認めてもらい、自分の色を出せるようになっていきました。
今のチームにも、似た子がいます。他の習い事を優先することが多く、キックはなかなか上達しません。それでも、常に自分で考え、できることを工夫しています。周りの子がボールしか見ていない時間に、その子は自分の役割を考えていて、男の子たちに混じりながら、チームになくてはならない存在になっています。
サッカーで飯を食うのか。楽しんで続けるのか。辞めて別の道に行くのか。どれを選んでもいい。自分で問い、自分で選び、自分らしく生きていく。その力さえ育てば、ジュニア年代のサッカーは、大成功だと思っています。
試合に出られたかどうか、他の子より上手いかどうか。そんなことは、この大きなゴールの前では、小さなことです。
親が、ジュニア年代で大切にしたいこと
最後に、親として、この時期に大切にしたいことを整理します。
①サッカーを好きでいられるようにする
すべての土台です。好きでいられれば、そこから社会力も、自分らしさも育っていきます。嫌いにさせないことが、何より大切です。
②うまくいかない経験も、大切にする
負け、失敗、理不尽。それも社会の縮図の一部です。信じられずに苦しむ時期があっても、取り除くのではなく、一緒に向き合ってください。
③結果より、その子自身の成長を見る
他の子との比較ではなく、その子の中の変化を見る。人としてどう育っているかを見る。それが、社会力を育てる目です。
④自分で選ばせ、自分らしさを尊重する
親の願望を押し付けず、子どもが自分で選び、自分らしくいられるように。それが、本当のゴールへの道です。
まとめ
ジュニア年代で本当に大切なことは、技術や結果そのものではありません。サッカーは社会の縮図であり、社会で生きる力を育てられるスポーツです。技術を磨く過程も含めて、その力を育てることが、この時期の大きな意味だと思っています。
ただ、それも願望であって、ゴールではありません。本当のゴールは、子どもが自分らしさを問い、自分らしく生きていくこと。サッカーを続けても、辞めても、その力が育てば、ジュニア年代は大成功です。
他の子と比べて一喜一憂しそうになったら、思い出してください。目指す先は、うまい選手になることではなく、自分らしく生きる人になること。その視点に立てば、今の小さな比較から、あなたと子どもは自由になれます。
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