ブラジルの広場で、陶芸をやっている女性と一緒に絵を見て歩いたことがあります。彼女は「これはいい」「これは良くない」と言っていくのですが、私には何が良くて何が悪いのか、まったく分かりませんでした。
そう伝えたら、返ってきた言葉で目が覚めました。数ある競技の中で、なぜサッカーなのか。その答えの一つが、あの一言に入っていました。
この記事では、サッカーという競技が子どもに何を残すのかを書きます。他のスポーツと迷っている方にも読んでいただける内容です。
世界とつながっている競技です
サッカーは、ボール一つあればどこでも成立します。
だから世界中に広がっていて、言葉が通じない相手とも一緒にできます。私自身、言葉が話せない状態で現地の人たちの輪に入れたのは、サッカーがあったからでした。
これは思っている以上に大きな財産です。今すぐ役に立つものではありませんが、その子の世界の広さに、後から効いてきます。
正解が一つに決まらない競技です
サッカーには、毎回同じ場面がありません。
味方の位置、相手の位置、時間、点差、その日の体調。すべてが違うので、教科書どおりの答えが通用しません。
つまり、常に自分で決めることを求められます。パスかドリブルか。前か後ろか。今か、もう少し待つか。
この「決める回数の多さ」が、サッカーの一番の特徴だと思っています。
「あなたはサッカーの良し悪しが分かるでしょう?」
ブラジルにいた頃、陶芸をやっているスウェーデン人の女性と知り合いました。
ある日、一緒に広場を歩きました。道端に絵がたくさん並んでいて、彼女は歩きながら「これはいい」「これは良くない」と言っていきます。
私には、何が良くて何が良くないのか、まったく分かりませんでした。そう伝えたら、こう言われました。
「私は芸術の勉強をしてきた。あなたはサッカーの良いプレー、悪いプレーが分かるでしょう?私は分からない」
ハッとしました。
自分がサッカーを見る目を、特別なものだと思ったことはありませんでした。でもそれは、子どもの頃からボールを蹴って、試合を見て、考えてきた時間の上にできていたものでした。
なぜサッカーなのか。答えの一つは、ここだと思っています。
長く関わったものは、その人だけの判断基準になります。何が良くて何が良くないのかを、人に聞かずに自分の中で決められるようになる。
サッカーでなくてもいいのですが、サッカーはそれが育ちやすい競技です。毎回状況が違って、正解が一つに決まらないからです。
言葉を使わないと成立しません
サッカーは、一人では絶対に成立しません。
味方に伝える。要求する。謝る。励ます。試合中、選手はずっと誰かとやりとりをしています。
しかも、伝わらないとすぐに失点につながります。結果がはっきり返ってくるぶん、伝え方が早く身につきます。
友達ができやすい競技です
チーム競技はどれもそうですが、サッカーは特に人数が多いです。
学年をまたいで一緒にやることも多いですし、対戦相手とも顔見知りになります。移籍や進学で環境が変わっても、どこかでつながります。
大人になってからも、サッカーがきっかけで人と会えます。私自身、今も続いている関係のほとんどは、そこから始まっています。
心が動く場面が多い競技です
点が入りにくい競技なので、1点の重みが大きくなります。
だから、決まったときの感情の振れ幅が大きい。悔しさも、嬉しさも、はっきり残ります。
感情が大きく動いた経験は、記憶に残ります。そしてその記憶が、続ける理由になります。
始めるのが簡単です
ボールが一つあれば始められます。道具の準備も、広い場所も、最初は要りません。
ルールも、細かい部分を除けば単純です。手を使わずにゴールへ入れる。それだけ分かれば、その日から遊べます。
入り口が低いことは、思っている以上に大事です。
自分だけの物差しが育ちます
なぜサッカーなのか。世界とつながること、決める回数が多いこと、伝え合わないと成立しないこと。理由はいくつも挙げられます。
ただ、私が一番大きいと思っているのは、長く関わることで自分だけの判断基準ができることです。
あの広場で言われるまで、自分にそんなものがあるとは思っていませんでした。当たり前になっていたからです。誰にでも、そういうものが一つはあります。
お子さんが今やっていることも、10年後には本人だけの物差しになっているかもしれません。それが何になるかは、今は分かりません。
だから、今は結果を測らなくていいと思います。続いていることのほうが、ずっと価値があります。
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