サッカーで緊張する子へ|「あなたは勇気を持っている」と言われて気づいたこと

練習・上達法

緊張することは、なくしたほうがいいものなのでしょうか。

私は言葉がほとんど話せないままブラジル行きの飛行機に乗ったとき、隣の席の人から「あなたは勇気を持っている」と言われたことがあります。自分では、そんなふうに思ったことは一度もありませんでした。

この記事では、緊張との付き合い方を書きます。試合前になると固くなる、うまく力を出せない。そういうお子さんを見ている方に向けた内容です。

緊張するのは、自然なことです

試合前に手が冷たくなる。お腹が痛くなる。声が出なくなる。前の日から落ち着かない。

これは、体が普通に働いている証拠です。

大事な場面で心拍数が上がるのは、体が準備をしているからです。集中力を上げるために、そういう仕組みになっています。

だから、緊張そのものを問題として扱わないほうがいいと思っています。「緊張しちゃダメ」と言われた子は、緊張している自分を隠すようになります。隠すぶんだけ、余計に苦しくなります。

緊張する子は、本気で臨んでいる

もう一つ、覚えておきたいことがあります。

どうでもいい試合で緊張する子は、あまりいません。

緊張しているということは、その試合を大事に思っているということです。うまくやりたい、勝ちたい、期待に応えたい。そういう気持ちがあるから、体が反応しています。

指導していても、緊張している子を見ると「この子は本気だな」と思います。冷めている子のほうが、実は心配になります。

「あなたは勇気を持っている」と言われた日

初めてブラジルへ行くとき、ポルトガル語も英語もほとんど話せませんでした。辞書を片手に、知っている単語を探しながら会話するような状態でした。

アメリカからブラジルへ向かう飛行機で、隣の席にブラジル人の女性が座りました。言葉が話せないことを伝えると、驚いた顔をされました。

そして辞書を使いながら、こう言われました。

「あなたは勇気を持っている」

自分では、勇気があると思ったことは一度もありませんでした。ただ、本物を見たい、知りたい。その気持ちだけで動いていました。内心はずっと不安でした。

そのとき思ったのは、自分が感じている自分と、相手から見えている自分は、まったく別物だということでした。

緊張している子も、たぶん同じです。本人は「怖い」「うまくできない」と感じています。でも外から見ている人には、そこに立っていること自体が勇気に見えていることがあります。

その差は、本人には見えません。だから、周りが言葉にして渡してあげる必要があります。

ただし、不安が大きすぎると力は出にくい

ここは分けて考えたいところです。

適度な緊張はパフォーマンスを上げますが、不安が大きくなりすぎると逆に働きます。

体が固くなる。周りが見えなくなる。ミスを避けることばかり考えて、思い切ったプレーが出なくなる。

この状態の背景には、たいてい「また失敗したらどうしよう」という記憶があります。前に怒られた。前に交代させられた。前に責められた。

つまり、過度な不安は緊張の問題ではなく、失敗の扱われ方の問題であることが多いです。

不安は、消すのではなく隣に置く

不安をゼロにしようとすると、たいてい失敗します。

「緊張しないで」と言われて緊張が消えた経験は、大人にもないと思います。

それより、あることを前提にしたほうがうまくいきます。

「緊張してる?」「うん」「そうだよね、大事な試合だもんね」。この一往復で十分です。認めてもらえた時点で、不安は半分くらい扱いやすくなります。

消そうとするから抵抗が生まれます。隣に置いておけるなら、そのまま試合に持っていけます。

先ではなく、今を見ると小さくなる

不安は、たいてい未来の話です。

負けたらどうしよう。ミスしたらどうしよう。交代させられたらどうしよう。まだ起きていないことを考えている時間が長いほど、不安は大きくなります。

だから、目線を今に戻す言葉が効きます。

「最初の1本、どこに蹴る?」「今日、誰をマークするの?」。具体的で、すぐ答えられて、今の話。これだけで頭の中の再生が止まります。

試合前に長い話をする必要はありません。むしろ短いほうがいいです。

立っているだけで、もう勇気です

緊張は、なくすものではありません。体が準備をしている合図で、その試合を大事に思っている証拠でもあります。

そう捉えられると、親のほうも構えなくてよくなります。緊張している子を見ても、「今日は大事なんだな」と思えるようになります。

私は、不安なまま飛行機に乗っていただけでした。それを勇気と呼んでくれた人がいて、はじめて自分の状態に別の名前が付きました。あの一言がなかったら、あの旅の記憶はもっと違うものになっていたと思います。

今日、お子さんが「緊張する」と言ったら、消そうとしないでください。「そうだよね」と受け取って、その次に、今日の最初の1プレーの話をしてみてください。

震えながらでもピッチに立っている。それは、本人が思っているよりずっとすごいことです。

【この記事を書いた人】

ぽこちパパ|Junior Football Base運営者

ジュニアサッカー指導歴25年以上。ブラジル・サンパウロでのサッカースクール設立・運営、Jリーグクラブスクールでの指導、女子チームや発達支援現場での活動を経験。現在はNPO法人を運営し、保護者支援や発達支援にも携わっています。

▶ぽこちパパのプロフィール
https://juniorfootballbase.com/profile/

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