試合に負けた帰り道、車の中が静まりかえることがあります。悔しさや怒りを抱えた子どもに、何を話せばいいのか、迷う保護者の方は多いのではないでしょうか。私もその一人でした。この記事では、息子が大敗した日の経験と、25年以上の指導で見てきたことをもとに、負けた日の関わり方の考え方を、私自身の失敗談も交えてお伝えします。正解を一つに決めるものではなく、私の場合はこうでした、というお話として読んでいただければと思います。
息子が大敗した日、私は「お疲れさま」しか言えなかった
息子が大敗した試合の日。私は車の中で、何を話そうか悩みました。励ました方がいいのか。反省を聞くべきか。結局、「お疲れさま」しか言えませんでした。すると息子も黙ったまま。ところが夜になると突然、「次はあの場面でこうしたい」と話し始めたのです。
あのとき私が何か言っていたら、この言葉は出てこなかったかもしれません。子どもの中で気持ちを整理する時間が、あの帰り道と夕食までの時間だったのだと思います。それ以来、負けた日は「何を言うか」より「話せる状態かどうか」を先に見るようになりました。
負けた直後は、話せる状態かどうかを見る
試合直後の子どもは、悔しさや反省、疲れなど、いろいろな感情が混ざった状態です。大人でも、負けた直後に冷静に話すのは難しいものです。「お疲れさま」くらいの短い言葉で十分だと、私は思っています。
子どもによっても違います。話したいタイプの子には聞き役になり、一人になりたいタイプの子には、無理に話を引き出さない。親が話したいタイミングではなく、子どもが話せるタイミングを待つ、という考え方です。
ここで言う「待つ」は、放っておくことや、興味を持たないこととは違います。様子はよく見ていたほうがいいと思います。私が見ているのは、次のような点です。
- 何をしているか
- 何を考えていそうか
- 周りで何が起きているか
- 何を感じていそうか
- いつもとの違いはないか
話しかけなくても、見ているだけで気づけることはたくさんあります。
私自身にも失敗があります。子どもが話を聞ける状態にないのに、思っていることを言い続けて、怒り続けてしまったことがありました。伝えたかった理由は、私が大切にしていることでした。けれど、タイミングと伝え方を間違えました。あとから、子どもには言いたいことも考えもあったのに、言えないまま悶々としていたことが分かりました。怒り方や伝え方については謝り、内容についてはその通りだと伝えました。
内容が正しくても、相手が受け取れる状態でなければ、入っていかないのだと痛感した出来事です。
勝ち負けは「褒める材料」。それ以外の意味は薄いと思う
負けた日だからこそ、態度を変えないようにしたいと考えています。勝敗で接し方を変えると、子どもは「勝たないと認めてもらえない」と感じやすくなります。いつも通りの生活を保つことが、家庭を「安心して帰ってこられる場所」にすると思います。
私は、勝ち負けや結果は、褒める材料になるもので、それ以外に大きな意味はないと考えています。親が結果しか気にできないと、子どもも同じになりやすいと感じるからです。
比べるなら、他の子ではなく、以前のその子と比べます。「前はできなかったことが、今日はできていた」という変化は、普段から見ようとしていないと気づきにくいものです。負けた試合の中にも、そうした変化はきっとあると信じて、探すようにしています。
変化に気づく力は、特別な才能ではなく、意識してよく観ることで育つと思います。試合や練習、プレーをたくさん見て、子どもの話をたくさん聞いていると、「いつもと違って良くなった」に気づけることが増えていきます。
振り返りは、本人から聞いてくるまで急がない
感情が高ぶった負けた日の夜は、振り返りが自責や他責に向かいやすいと感じます。当日に反省会を開くより、翌日以降の落ち着いたときのほうが、言葉が入りやすいと思います。
試合後に親が言わないでほしいのは、悪いプレーの振り返りだと、私は考えています。ただ、本人から聞いてきて、うまくなりたい気持ちや自主性が見えるなら、伝えてもいいと思います。自主性がないのに親が言っても、入っていきにくいものです。
また、親が「教える」のではなく、「伝える」立場でいられるかも大切だと思っています。経験のある人から言われるのと、知っているだけの人から言われるのとでは、子どもへの入り方が違います。自分はできるわけでも上手いわけでもなく、見て思ったことを知っているだけ、という立場を忘れないようにしたいと考えています。
子どもの狙いが分からないときは、責めずに質問します。「あのとき、何を考えていた?」と聞くと、狙いがあったと分かることもあります。狙いがあれば、ミスをしても上達につながると考えています。
伝えるときは、良い事実と課題をセットにします。たとえば、「逆サイドに展開できたね」「流れを落ち着かせたね」という良い事実と、「あの失点のとき、距離感が近かったね」という課題を、一緒に伝える形です。結果だけでなく、その子が「やろうとしていたこと」を探すことも、見る側の役目だと思います。
負けた日に意識したい6つのこと
- 直後は無理に話さず、「お疲れさま」程度の短い言葉にする
- 結果より、経験や以前との変化に目を向ける
- 話したい子には聞き役に、一人になりたい子には待つ
- 当日の反省会は急がない
- 勝敗で態度を変えない
- 家庭を、安心して帰ってこられる場所にする
まとめ
負けた日の声かけで大切なのは、特別な言葉よりも、子どもが安心して帰ってこられる状態と、話せるタイミングを待つことだと、私は考えています。言葉を探して悩む時間が、少し楽になればうれしいです。息子が大敗した日、私は「お疲れさま」しか言えませんでしたが、夜になって息子のほうから話し始めました。次に負けた日は、短い一言だけ添えて、しばらく様子を見てみてください。正しい言葉を探すより、そばにいることを大切にしていただければと思います。
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