「自主練をたくさんすれば上手くなる。」
そう言われることがあります。確かに、練習量が成長につながる場面はあります。でも、それだけでは説明できないケースを、私は何度も見てきました。
25年以上の指導経験の中で出会った、5人の子どもの話をします。
自主練が上達に必要だと言われる理由
まず、一般的に言われる理由を整理します。
反復が技術を定着させるから
サッカーの技術は、繰り返し体で覚えることで定着すると言われています。
練習量に比例して成功体験が増えるから
回数を重ねるほど、できた経験が増え、自信につながりやすくなります。
チーム練習だけでは不足するから
限られた練習時間の中で、すべての技術を磨くことは難しいため、自主練が補完的な役割を果たすとされています。
これらは間違いではありません。ただ、私が現場で見てきたものは、もう少し複雑でした。
学校で一人ボールを蹴り続けていた子
学校に行くと、いつもサッカーで遊んでいる子がいました。サッカーを習っているわけではないのに、いつもボールを蹴っている。仲間が帰った後も、一人で蹴り続けていました。
その子がチームに入った途端、大きな戦力になりました。
おっさんフットサルに遊びに来ただけの子
私が個人的にやっているフットサルに、姉についてきただけの子がいました。人数が少なくて、仕方なくやらされていた状態です。
最初は動かないし、声も出ない。それでも大人から褒められて自信になり、そのうち自分から来るようになりました。小5でチームに入った時には、チームの中心選手になっていました。
山に囲まれた場所で育った子
ずっと野球をやっていた子もいました。サッカーは友達と遊ぶ時だけ。家の周りは山だらけで、遊びに行くのにも何十分もかかる場所でした。
遊ぶものがない時は自分で作る。遊ぶ人がいない時は、一人で遊べることを探す。そうやって育ってきた子でした。
小5の中頃にサッカーにのめり込んでからは、中心選手になりました。
教わった通りにやる子と、泣きながらリフティングする子
一方で、別のケースもあります。
親コーチにマーカーを買ってもらい、やることを教えてもらい、教わった通りに並べて、教わった通りに真似して終わったら帰る。低学年からサッカーを習っているのに、伸び悩んでいる子がいました。
もう一人、教育熱心なお母さんに毎日付き添われ、サッカーが上手な兄に怒られながら、泣きながらリフティングをしている子もいました。最初は5回しかできなかったのが、半年後の今は200回を超えるようになりました。でも、サッカーの試合では力を発揮できていません。
自主性があるかどうかが上達を左右する
これはほんの一ケースですし、半年後にどうなるかは分かりません。
それでも、私が現場で感じているのは、自主練の「量」より「自主性があるかどうか」の方が、上達に大きく関わっているということです。
学校で一人ボールを蹴っていた子、フットサルに自分から来るようになった子、山で一人遊びを工夫していた子。共通しているのは、誰かに言われたからではなく、自分の中から「やりたい」という気持ちが出ていたことです。
逆に、教わった通りにこなすだけの練習、泣きながらやらされるリフティングは、形としては自主練に見えても、本人の中から湧き出たものではありません。
親にできること
自主練の量を増やすことより、子どもの中に「やりたい」という気持ちが芽生える環境を作ることの方が、ずっと大切だと思っています。
そのためにできることは、結果を急がせないこと。子どもが自分で見つけた遊びや工夫を否定しないこと。そして、何かに夢中になっている時間を、たとえそれが練習メニューと違っても、見守ることです。
まとめ
自主練の量が多ければ上達するとは限りません。学校で一人ボールを蹴り続けていた子、フットサルに自分から来るようになった子、山での一人遊びから工夫を学んだ子。共通していたのは、自主性があったことでした。
一方で、教わった通りにこなすだけの練習や、泣きながら続けるリフティングは、回数を重ねても、試合で力を発揮できないことがあります。
お子さんの自主練について悩んでいるなら、量を増やすことより、自分からやりたいと思える環境があるかどうかを見てみてください。それが、長い目で見た成長につながっていくはずです。
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