子どものチームのコーチが、試合中ずっと怒鳴っている。ミスをするたびに大声で叱責され、子どもの表情がどんどん硬くなっていく。「厳しさも必要なのかな」と思う一方で、「これって本当に指導なんだろうか」というモヤモヤが消えない。でも周りの保護者は何も言わないし、自分だけが気にしすぎなのかも分からない。
そんな悩みを持つ保護者の方に向けて、この記事を書きました。
25年以上指導現場に関わってきた立場から、怒鳴る指導は必要なのかという問いに、率直にお答えします。トレセン対抗の大会で目にした、ある事実も合わせてお伝えします。読み終える頃には、今のチームの指導をどう見ればいいか、判断の軸が持てるはずです。
怒鳴る指導について、一般的に言われていること
まず、賛否両方の意見を整理します。
「必要」とされる理由
- 危険なプレーを即座に止めるためには強い声が必要
- 緊張感がある方が子どもは集中する
- 社会に出れば厳しさに直面するので、慣れさせる意味がある
「不要」とされる理由
- 恐怖で萎縮した状態では、判断力も技術も発揮できない
- 怒られないためのプレーになり、チャレンジしなくなる
- スポーツ庁やJFAも、暴言・威圧的な指導を明確に問題視している
近年の流れとしては、怒鳴る指導は見直される方向にあります。JFAの指導者ライセンス講習でも、選手の主体性を引き出す指導が中心に据えられています。
ただ、現場の実態はどうなのか。私が実際に見てきたことをお伝えします。
トレセンの大会で気づいたこと
息子がトレセンに参加した時のことです。トレセン対抗の大会に足を運びました。
そこで気づいたことがあります。
怒鳴っているコーチが、ほとんどいませんでした。
各地区から選ばれた選手たちが集まる場で、指導者も選ばれた人たちです。ミスは当然起きます。試合も競っています。それでも、怒鳴り声はほとんど聞こえてきませんでした。
選ばれた指導者たちは、学んでいます。怒鳴ることが選手の成長につながらないことを、知識としても体感としても分かっている。だから怒鳴らない。私はそう受け取りました。
いいチーム、いい指導者は怒鳴らない。その傾向を、目の前で確認した経験でした。
場所によって態度を変えるコーチ
ただ、もう一つ見てきた現実があります。
トレセンでは怒鳴らないのに、自分の指導チームに戻るとめちゃくちゃ怒鳴る。そういうコーチを実際に見たことがあります。
これは何を意味するのでしょうか。
トレセンのような場所で怒鳴るのは良くないことだと、頭のどこかで分かっているのだと思います。周りの目がある場所では抑えられる。つまり、怒鳴ることは指導に不可欠なものではなく、抑えられる行動だということです。
「怒鳴らないと子どもに伝わらない」という主張がありますが、同じコーチがトレセンでは怒鳴らずに指導できている。この事実が、その主張への一番の反証になっていると思います。
試合で怒鳴るコーチが見せているもの
以前の記事でも書きましたが、私はこう考えています。
試合中、ミスに対して怒鳴っているコーチは、練習で落とし込めていない自分自身を、その場で披露しているようなものだと。
技術や判断力は、試合中に怒鳴って身につくものではありません。練習の中で繰り返し積み上げていくものです。試合での怒りは、その積み上げが足りなかったことの表れである場合が多いと感じています。
もちろん、駐車場に飛び出しそうになるなど、命や大怪我に関わる場面で強い声を出すのは別の話です。それは指導ではなく、安全の確保です。
昔ながらの指導観が残っている場合もある
地域のチームを見ていると、昔ながらの指導観のまま、新しい情報を取り入れる機会がないまま指導を続けているケースもあります。
これは本人の人格の問題というより、学ぶ機会に触れてこなかったという環境の問題でもあると思っています。ボランティアで長年チームを支えてきた方々への感謝は前提としてあります。
ただ、指導を受ける子どもの側から見れば、コーチの事情は関係ありません。怒鳴られて萎縮する経験は、その子のサッカー人生に確実に影響します。だからこそ、指導する側は学び続ける必要があると思っています。私自身も含めてです。
保護者ができること
チームのコーチが怒鳴る指導をしている場合、保護者にできることを整理します。
①子どもの状態を最優先で見る
同じ怒鳴り声でも、受け取り方は子どもによって違います。まず、我が子がどう感じているかを確認してください。萎縮している、サッカーが楽しくなさそう、というサインが出ていたら、注意が必要です。
②「厳しさ」と「怒鳴り」を区別する
要求水準が高いことと、感情をぶつけることは別物です。厳しくても怒鳴らない指導者はたくさんいます。トレセンの指導者たちがその証明です。
③他のチームや大会を見てみる
自分のチームしか知らないと、それが普通だと思ってしまいます。トレセンの大会や他チームの試合を見ると、怒鳴らない指導が実際に機能している場面を確認できます。
④環境を変える選択肢を持っておく
改善が見込めず、子どもへの影響が大きいなら、移籍は逃げではありません。子どもが安心してプレーできる環境が、成長の土台です。
まとめ
怒鳴る指導は必要なのか。トレセン対抗の大会で怒鳴るコーチがほとんどいなかったという事実が、一つの答えだと思っています。選ばれた指導者たちは、怒鳴らずに指導できることを知っています。
そして、トレセンでは怒鳴らないのに自チームでは怒鳴るコーチの存在が、もう一つの答えです。怒鳴ることは指導に不可欠なものではなく、抑えられる行動です。
お子さんのチームの指導に違和感を持ったら、まず子ども自身の状態を見てください。そして機会があれば、他のチームや大会の指導風景を見に行ってみてください。比較する目を持つことが、我が子の環境を考える一番の材料になります。
違和感を持てたこと自体、お子さんのことをちゃんと見ている証拠です。その感覚を大切にしてください。
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