試合に出られない子への接し方|保護者ができる本当のサポート

親のサポート術

サッカーを頑張っている我が子が、試合に出られない。

ベンチに座ったまま試合が終わる姿を見るのは、子ども以上に親がつらいものです。「うちの子の何が足りないんだろう」「このままサッカーを嫌いになってしまわないか」。そんな思いを抱えている方は少なくないと思います。

この記事では、日本サッカー協会が示してきた考え方を整理したうえで、私が指導していたチームで大会を二つに分けた年の話をお伝えします。そのうえで、今日からできる関わり方を書きます。

読み終えたとき、選択肢が一つ増えているはずです。

まず知っておきたい、「補欠」をめぐる日本サッカーの流れ

この問題は、あなたの家庭だけの悩みではありません。日本サッカー全体が長く向き合ってきたテーマです。

日本サッカー協会は「補欠ゼロ」を掲げてきた

日本サッカー協会は「Football For All ~サッカーをもっとみんなのものに~」を合言葉に、JFAグラスルーツ宣言を出しています。

この宣言を形にするために設けられた6つのテーマの一つが、「補欠ゼロ」です。ほかに「引退なし」「障がい者サッカー」「女子サッカー」「施設の確保」「社会課題への取り組み」があり、この趣旨に沿った活動をしている団体を認定する制度が運営されてきました。

制度そのものは2024年末で終了していますが、協会は終了にあたって、グラスルーツ推進の考え方自体は変わらないと述べています。

つまり、「試合に出られない子がいる状態は望ましくない」というのは、一個人の意見ではなく、日本サッカー協会が示してきた方向性です。

8人制への移行も、出場機会を増やすための変更だった

小学生の全国大会が11人制から8人制に変わったことをご存じの方も多いと思います。

これも、一人ひとりがボールに触れる回数を増やし、より多くの子どもが試合に関われるようにするための変更でした。

日本のサッカー界は、子どもの出場機会を増やす方向へ、長い時間をかけて舵を切ってきました。

それでも、出られない子はいなくならない

ただ、現実には出場機会が偏るチームは今もあります。

勝つことを目指すからには起用に差が出る、という考え方にも理由はあります。目標に向かって競争することで伸びる子もいます。そこを一方的に否定するつもりはありません。

大切なのは、そのチームの考え方をあなたが知ったうえで選べているかどうかだと思います。

私の立場を、はっきり書いておきます

私は、小学生年代ではできる限り全員が同じように試合を経験するべきだと考えています。

理由は単純です。試合でしか身につかないものが、確かにあるからです。練習でどれだけ上手にできても、公式戦の緊張感の中で判断することとは別物です。

そして小学生年代は、その子がサッカーを好きになるかどうかが決まる時期でもあります。

大会を、二つに分けたことがあります

あるチームで指導していたとき、年間の大会を二つに分けました。

年間に10以上ある大会のうち、メンバーを選考して勝利を目指す大会は2つだけ。残りはすべて、全員が出場して経験を積むための大会にする。そう決めて、年度の最初にコーチ全員で共有し、約束しました。

中山間地域にある、いわゆる弱小チームでした。

最初に反発したのは、子どもたちでした

保護者ではありません。声を上げたのは選手たちでした。

「なんで勝ちに行かないんだ」

「ガチメンでやりたい」

年度の初めは、こうした言葉が出ました。勝ちたい気持ちがあるからこその反応です。そのたびに、この約束は本当にこの子たちのためになっているのか、と考えました。

それでも、方針は変えませんでした。

一年が終わったときに見えたもの

その年度、チームは県大会で過去最高に並ぶ成績を残しました。中山間地域の小さなチームとしては、それまで届かなかった場所です。

そしてその戦いの中に、年度当初にはレギュラー扱いをされていなかった子も、全員が出場していました。

私が感じたのは、全員に出場機会を用意したことが勝利を遠ざけたわけではない、ということでした。むしろ、誰にでも出番があると分かっている環境のほうが、子どもたちは伸びようとします。「どうせ自分は出られない」と思ったまま練習する時間が、なくなるからです。

このとき私は、子どもを変えようとしたわけではありませんでした。変えたのは、大会の使い方だけです。

それでも、今この状況にいるなら

ここからは、今まさに出場機会が少ないお子さんに、どう関わるかの話です。

避けたい声かけと、その理由

「監督がおかしい」

親としては言いたくなる場面もあると思います。ただ、これを子どもの前で言うと、うまくいかない原因が全部外側にあることになってしまいます。子どもから考える機会を奪ってしまう言葉でもあります。

指導者の判断がいつも正しいとは限りません。それでも、子どもには「監督は何を期待していると思う?」と聞いてみるほうが、次につながります。

「もっと頑張れば出られるよ」

励ましのつもりでも、子どもには「今の頑張りでは足りない」と聞こえることがあります。

先に「今日も最後まで声を出していたね」と、今やれていることを認める。順番を変えるだけで、受け取られ方が変わります。

試合後すぐに感情をぶつける

怒る、嘆く、コーチを批判する。子どもは親が思う以上に、周りの空気を読んでいます。

言いたいことがあるときほど、その日は言わない。翌日に回すだけで、伝わり方は変わります。

代わりにできること

子どもの話を聞くこと。「悔しかった?」と聞いて、答えを待つ。アドバイスは、聞かれてからで十分です。

出場時間以外の変化を見つけて伝えること。守備で戻る回数が増えた、練習の入り方が変わった。試合に出ていなくても、変化は起きています。

そして、自主練を強制しないこと。「出たいなら練習しろ」と言った瞬間に、練習は罰になります。

環境そのものを見直す、という選択肢

ここが、この記事でいちばん伝えたいことです。

子どもへの接し方を工夫するのは大事です。でも、それだけが選択肢ではありません。

チームを変える。もう一つ別の場所でボールを蹴る機会をつくる。地域の練習会やフットサルに参加してみる。

私が大会を分けたときにやったことも、結局は同じです。子どもに「もっと頑張れ」と言ったのではなく、出番がある環境を先に用意しただけでした。

もちろん、今のチームに残る判断も尊重されるべきです。仲間がいる、通いやすい、指導者を信頼している。理由は家庭ごとに違います。

ただ、「ここしかない」と思い込んでいる状態と、「いくつかある中でここを選んでいる」状態とでは、同じ場所にいても親子の気持ちがまったく違います。

一つだけ、考えてみてほしいこと

我が子が試合に出られないとき、いちばん苦しいのは誰でしょうか。

送迎をして、費用をかけて、応援してきた親の悔しさは、本物です。でもそれは、子ども本人の悔しさとは別のものかもしれません。

お子さんは今、試合に出たいのでしょうか。それとも、親が悲しそうな顔をしていることのほうが気になっているのでしょうか。

一度、聞いてみてもいいのかもしれません。

よくある質問

Q. コーチに直接、出場機会について聞いてもいいですか。

A. 聞くこと自体は問題ないと思います。ただ「なぜ出さないのか」ではなく「何を身につけたら出場機会が増えそうですか」と聞くほうが、その後の関係が保ちやすくなります。

Q. 子どもが「別に出たくない」と言います。本心でしょうか。

A. 本心のこともありますし、期待されない状況に慣れて、傷つかないように言っていることもあります。答えを決めつけず、しばらく様子を見てあげてください。

Q. 全員出場だと、勝ちを目指す子が物足りなくなりませんか。

A. 私が指導したチームでも、最初に不満を言ったのは子どもたちでした。ただ、勝ちに行く大会を年に2つ用意していたので、そこに向かう目標は残っていました。全部を同じにする必要はないのだと思います。

まとめ

試合に出られない子がいる状態について、日本サッカー協会はグラスルーツ宣言の中で「補欠ゼロ」というテーマを掲げてきました。全国大会の8人制への移行も、出場機会を増やすための流れの一つです。

私自身、年間10以上ある大会のうち勝ちに行くのは2つだけと決めた年がありました。最初は子どもたちから不満が出ましたが、その年、チームは県大会で過去最高に並ぶ成績を残し、年度当初はレギュラー扱いされていなかった子も全員が出場しました。

このとき変えたのは、子どもではなく大会の使い方でした。環境を整えるほうが、人を変えようとするより早い。それが、この経験から得た実感です。

まずは今週、お子さんに一度だけ聞いてみてください。「今、サッカー楽しい?」と。出場時間の話ではなく、そこから始めてみてほしいと思います。

ベンチの我が子を見ている時間は、本当につらいと思います。でもその時間に一緒に悩んでくれる親がいることは、お子さんにとって決して小さなことではありません。

【この記事を書いた人】

ぽこちパパ|Junior Football Base運営者

ジュニアサッカー指導歴25年以上。ブラジル・サンパウロでのサッカースクール設立・運営、Jリーグクラブスクールでの指導、女子チームや発達支援現場での活動を経験。現在はNPO法人を運営し、保護者支援や発達支援にも携わっています。

▶ぽこちパパのプロフィール
https://juniorfootballbase.com/profile/

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