「うちの子、試合に出られない時、何を感じているんだろう。」
親として、そう思うことはありませんか。
悔しいのか。恥ずかしいのか。諦めているのか。傷ついているのか。
子どもの内側は、外からは見えにくいものです。この記事では、25年以上の指導現場で見てきた、出場機会が少ない時間の中で子どもたちが感じていたことを、印象に残っている2つの場面とともにお伝えします。
全員出すことを基本にしている理由
私が指導するチームでは、全員出すことを基本にしています。
ただし、大会によって方針は変えています。
全員出す大会なのか、勝ちに行く大会なのか。それを、子どもたちと保護者に事前に説明しています。
なぜ今日は出られないのかを、子ども自身が理解した上で試合に臨めるようにするためです。
日本サッカー協会とJリーグが推進するリスペクトプロジェクトでは、プレーする仲間やライバルを含め、ピッチに関わるすべての人を尊重する姿勢が基本理念として掲げられています。
出場機会に関係なく、仲間の活躍を素直に認め合える。それは、この理念がチームの中に根づいている一つの表れだと感じています。
そしてこの感覚は、教えて身につくものではありません。
出たり出なかったりという経験を、実際に繰り返す中で、少しずつ育っていくものだと思っています。ベンチにいる時間は、ただ待っているだけの時間ではありません。仲間のプレーを近くで見て、感じて、考えている時間でもあります。
スタメンの子が、ベンチスタートの子の活躍を喜んだ
県大会は、勝ちに行く大会にしていました。
ある試合で、初戦にベンチスタートの選手がスタメンで出場する機会がありました。
いつもスタメンだった選手からすれば、自分の出場機会が減る場面です。
それでもその選手は、ベンチスタートの子のプレーを素直に褒めていました。活躍を、一緒に喜んでいました。
その姿を見て、指導者として嬉しかったのを覚えています。
試合に出る出ないという経験を繰り返す中で、仲間の活躍を自分のことのように喜べる感覚が育っていた。それは、スタメンを固定し続けていたら生まれなかった感情だと思っています。
「自分だったら止められなかった」という言葉
もう一つ、忘れられない場面があります。
チームのキーパーが怪我をした試合がありました。代わりに入ったのは、普段はベンチスタートのキーパーでした。タイプも違う。普段の出場機会も少ない選手でした。
その試合後、普段スタメンのキーパーがこう言いました。
「自分だったら止められなかった。」
出場した選手を、心から褒め称えていました。自分がいない場面で仲間が活躍したことを、素直に認めていました。
この言葉が出てきた背景には、その子自身がベンチで過ごした経験があると思っています。出たり出なかったりを繰り返す中で、仲間のことを自分事として感じられる感覚が育っていたのです。
「出たり出なかったり」が子どもを育てます
毎回スタメンで出続ける経験だけが成長ではありません。毎回ベンチにいる経験だけでも、成長は難しいと感じています。
出たり出なかったり。いろんなポジションをやったり、いろんな選手と組んだりする中で、子どもはたくさんのことを感じ、成長していくのだと思っています。
仲間の活躍を素直に喜べる感覚。自分にできなかったことを認められる素直さ。これらは、教えて身につくものではありません。経験を通して、自然に育つものです。
今日から試せる3つのこと
1. 試合後に「誰のプレーが良かった?」と聞いてみる
自分のプレーではなく、仲間のプレーについて聞く一言です。子どもの内側にある感情が、言葉になって出てくることがあります。
2. 出場時間ではなく、表情の変化を見る
出た時間の長さより、ベンチにいる時の表情や、仲間への声かけに目を向けてみます。
3. 「出られなかった時間」を、責めずに聞く
「なんで出られなかったの」ではなく、「その時間、何してた?」と聞いてみます。
その時間、子どもは何もしていないわけではありません
ベンチにいる時間は、大人の目には「何もしていない時間」に見えることがあります。
でも実際には、仲間のプレーを見て、感じて、自分だったらどうするかを考えている時間かもしれません。
その時間を、どんな時間として見てあげられるか。それが、子どもの経験の意味を変えるかもしれません。
よくある質問
Q. 出場機会が少ないことを、子ども自身はどう感じているか聞いてもいいですか。
聞いても大丈夫です。ただし、「悔しいでしょ」と決めつける聞き方ではなく、「今どんな気持ち?」とオープンに聞く方が、本音が出やすくなります。
Q. 仲間の活躍を喜べない様子の時は、どうすればいいですか。
すぐに喜べなくても問題ありません。悔しさと嬉しさは、同時に存在することもあります。時間をかけて育っていく感覚なので、焦らず見守ってあげてください。
まとめ
試合に出られない子どもは、悔しさだけを感じているわけではありません。仲間の活躍を喜ぶ力、自分にできないことを認める素直さ。それらが、「出たり出なかったり」の経験の中で育っていきます。
スタメンの子がベンチスタートの子の活躍を素直に喜んだ場面、「自分だったら止められなかった」と言えたキーパーの言葉。その姿が、試合に出たり出なかったりする経験の意味を教えてくれました。
出場機会が少ない時期のお子さんを見て、心配になることがあると思います。
でもその時間の中で、外からは見えない成長が、静かに育っていることがあります。
まずその時間を、一緒に過ごすこと。それが、親にできる一番のサポートだと思っています。
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