「サッカー辞めたい」
ある日突然、そう言われて戸惑ったことはありませんか。サッカーを楽しそうに続けていたはずなのに、なぜ急にそんなことを言うのでしょうか。
実は、「辞めたい」という言葉の裏には、子どもなりのさまざまな感情が隠れていることがあります。この記事では、子どもがサッカーを辞めたいと言う理由と、女子チームを指導する中で見えてきた、成長にともなう自然な変化についてお伝えします。
「辞めたい」の裏には、いくつもの理由が重なっています
サッカーを辞めたい、という言葉は、サッカーが嫌いという意味とは限りません。
練習がつらい。人間関係が苦しい。試合に出られない。怒られるのが怖い。子ども自身がそれをうまく整理できず、まとめて「辞めたい」という言葉で表現していることがあります。
思うようにいかない苦しさも、よくある理由です。練習しているのに試合に出られない。ミスばかりしてしまう。思うように上達しない。そんな状況が続くと、諦めたいというより、苦しさから逃れたい気持ちが強くなることがあります。
周囲の期待がプレッシャーになっているケースも見落とされがちです。親をがっかりさせたくない。コーチの期待に応えたい。そう考えるうちに、サッカーが「楽しいもの」ではなく「期待に応えるためのもの」になってしまうことがあります。
そしてもう一つ、成長過程の自然な変化があります。
笹川スポーツ財団が実施している調査では、12歳から21歳にかけて、最も高い頻度で運動やスポーツに取り組む層の割合が年々減少する傾向が示されています。年齢が上がるにつれて、勉強や友人関係、他の興味など、サッカー以外に時間とエネルギーを使う場面が自然に増えていくということです。
これは、誰かが悪いわけでも、サッカーへの気持ちが冷めたわけでもありません。成長の過程で、ごく自然に起きることです。
女子チームで見えてきた、「続ける」の難しさ
以前指導していた女子チームの周辺では、成長し、進学していくにつれて、サッカーを続けるという選択が難しくなると感じている指導者が多くいました。
大学に進学すると、学業、サークル、アルバイト、恋人。理由はさまざまですが、サッカーから離れていく子が多い、とよく聞いていました。
幸い、自分が指導していたチームでは、続ける子がほとんどでした。
ただ、ある時、チームの代表が選手たちにこう言ったことがありました。
「コーチが自分の時間を作ってきてくれているんだから、みんなも来てくれ」
その言葉を聞いて、それは言わないでほしい、と伝えました。
選択には、その人の人生が出ます。責任も伴います。彼女たち自身がチームを選ぶために必要なのは、義理や罪悪感ではないはずだと思っていました。
だからこそ、どんなチームなら残りたいと思ってもらえるのかを、いつも考えてきました。技術を伸ばすことはもちろん、人生を豊かにする経験、感覚を刺激する時間、知識を増やす機会、コミュニケーションを楽しむ仕掛け。「ここならもっと学べる」と思ってもらえることで、自主的に参加したいと思える場所にしたいと考えてきました。
参加を強制するようなチームには、人は自然と集まらなくなるのだと思っています。
「続けさせる」のではなく、「選ばれる」場所であること
子どもがサッカーを辞めたいと言う時、大人はつい「どう続けさせるか」を考えがちです。
でも、本当に大切なのは、その子が「ここにいたい」と思えるかどうかだと感じています。
義務感や罪悪感で引き止めた関係は、長くは続きません。逆に、その場所に価値を感じてもらえれば、無理に引き止めなくても、自然と続いていきます。
これは、成長にともなう自然な変化を止めることはできない、という前提に立った考え方でもあります。
今日から試せる3つのこと
1. 「辞めたい」を、理由を一つに絞らずに聞く
複数の感情が重なっていることを前提に、話を聞いてみます。
2. 「続けてほしい」を、義務として伝えない
「みんな頑張っているから」ではなく、子ども自身の気持ちを主語にして話します。
3. その場所の「価値」を、一緒に言葉にしてみる
「ここで何が楽しい?」「ここで何を得ている?」と聞いてみると、続ける理由が見えてくることがあります。
その「辞めたい」は、何から離れたいのでしょうか
サッカーそのものから離れたいのか。今のつらさから離れたいのか。それとも、ただ次のステージに進もうとしているだけなのか。
決めつけずに、一度、子どもと一緒に考えてみてほしいと思います。
よくある質問
Q. 「辞めたい」理由を、子どもがうまく説明できない時はどうすればいいですか。
無理に言葉にさせる必要はありません。気持ちを聞く質問(「どんな時が一番つらい?」など)から始めると、少しずつ出てくることがあります。
Q. 成長にともなう自然な変化と、深刻な悩みの違いはどう見分ければいいですか。
表情や生活全体の様子を見てみてください。特定の場面だけを避けている場合は、深刻な悩みが背景にあることもあります。
Q. 「辞めたい」と言われた時、無理に引き止めてもいいのでしょうか。
義務感で引き止めることはおすすめしません。それより、その子がその場所にいたいと思えるかどうかを、一緒に考える方が長期的には力になります。
まとめ
子どもがサッカーを辞めたいと言う理由は、一つではありません。思うようにいかない苦しさ、人間関係の悩み、周囲からの期待、そして成長にともなう自然な変化。いくつもの感情が重なっていることがあります。
以前指導していた女子チームでは、進学とともにサッカーを離れる子が多い中、義務感で引き止めるのではなく、「ここにいたい」と思える場所をつくることを大切にしてきました。
今日、もし「辞めたい」と言われたら、理由を一つに決めつけず、まずその子の気持ちを聞いてみてください。
その場所が、義務ではなく、選びたくなる場所であるかどうか。そこに、続けるかどうかの本当の分かれ道があるのだと思っています。
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