「コーチが怖いから行きたくない」と子どもに言われて、どうすればいいか分からない。厳しい指導なのか、うちの子が繊細すぎるのか、それとも本当に問題のある指導なのか。練習を見に行っても判断がつかず、コーチに聞くのも気が引ける。そんなモヤモヤを抱えている保護者の方に向けて、この記事を書きました。
25年以上の指導経験と、息子が体験にすら参加できなかった実体験から、子どもの「怖い」の正体と、親が取るべき対応の順番をお伝えします。読み終える頃には、「怖い」と言われた時に何から始めればいいかが見えてくるはずです。
「コーチが怖い」と言われた時の一般的な対応
まず、よく言われる対応を整理します。
何が怖いのかを具体的に聞く
「怖い」の中身は様々です。怒鳴られるのが怖いのか、ミスを指摘されるのが怖いのか、雰囲気が怖いのか。まず具体的に聞くことが推奨されます。
ただし、子ども自身も「何が怖いのか」を言葉にできないことが多くあります。「なんとなく怖い」としか言えない場合も、無理に問い詰めないことが大切です。
一時的な感情か、継続的なものかを見る
一度怒られた直後だけ「怖い」と言っているのか、何週間も続いているのか。一時的な感情なら時間が解決することもありますが、継続しているなら状況を確認する必要があります。
実際の指導場面を見に行く
子どもの話だけで判断せず、実際の練習を見て状況を確認することが大切とされています。子どもの主観と実際の指導が違うこともあれば、話以上に厳しい場面を目にすることもあります。
必要であればコーチや運営に相談する
明らかに行き過ぎた指導がある場合は、直接相談することも選択肢になります。伝え方については、感情ではなく「子どもがこう感じている」という事実を共有する形が受け取られやすいです。
これらは正しい手順です。ただ、私が息子から学んだのは、もっと手前にある話でした。
体験にすら参加できなかった息子
息子が4年生くらいの頃のことです。
あるサッカースクールの体験に行きました。新しい環境で刺激をもらえたら、という軽い気持ちでした。
ところが息子は、「コーチが怖い」という理由で、入会どころか体験にすら参加しませんでした。
グラウンドの端から練習の様子を見て、それで終わりです。ボールに触ることすらありませんでした。
そのコーチが何か厳しいことを言ったわけではありません。怒鳴っていたわけでもありません。むしろ、練習の様子を見る限り、熱心に指導している方でした。
身体が大きい。声が大きい。
それだけで、子どもに怖い印象を与えてしまうことがあるのです。
怖いと感じたら、言葉は届かない
この経験から気づいたことがあります。
一度「怖い」と感じてしまうと、コーチが何を言っているかは関係なくなります。
大人から見れば、そのコーチは褒めていたかもしれません。励ましていたかもしれません。でも、怖いと感じている子どもには、その中身は届きません。褒めていようが励ましていようが、怖いものは怖いのです。
これは指導する側にとって、かなり重要な視点だと思っています。「ちゃんと褒めているのに」「励ましているのに」とコーチが思っていても、子どもが怖さを感じている限り、その言葉は届いていない可能性があります。
つまり、指導の内容以前に、まず安心感がなければ何も始まらないということです。
かく言う自分も「怖い」と言われている
正直に告白すると、私自身も「怖い」と言われたことがあります。
保護者から「娘が怖いと言っている」と意見をもらった経験もありますし、後から「怖いと思っていた」と保護者に言われたこともあります。
自分では、伸び伸びさせるために声かけを控えていたつもりでした。でも、話しかけられないことが「怖い」に繋がっていた。意図と受け取られ方は、別物でした。
25年以上指導していても、こういうことが起きます。コーチの側に悪意がなくても、子どもが怖いと感じることはある。指導する立場になった今も、それを痛感しています。
だからこそ、子どもが「怖い」と言った時、「そのコーチが悪い」とも「子どもが弱い」とも、簡単には言えないと思っています。
親ができる対応
子どもが「コーチが怖い」と言った時、親にできることを順番に整理します。
①「怖い」を否定しない
「そんなことないよ」「良いコーチじゃない」と打ち消したくなりますが、子どもが感じた怖さは本物です。まず「怖かったんだね」と受け止めることが最初の一歩です。
ここで否定されると、子どもは「怖い」と言うこと自体をやめてしまいます。感じていることを話せる関係を守ることが、すべての土台になります。
②何が怖いのかを一緒に探る
怒られたのか、見た目や声なのか、雰囲気なのか。息子のように、身体の大きさや声の大きさだけで怖いと感じることもあります。
「どんなところが怖い?」と聞いて、答えられなければそれ以上は聞かない。中身が分かれば対応も変わりますが、分からなくても焦る必要はありません。
③時間が解決することもあると知っておく
第一印象の怖さは、関わりが増える中で消えていくことがあります。何度か練習に通ううちに、「あのコーチ、意外と面白い」と印象が変わった子を何人も見てきました。
慣れる時間を待つことも、選択肢の一つです。
④それでも無理なら、環境を変えていい
怖さが消えず、サッカー自体が嫌いになりそうなら、別のスクールやチームを探すことは逃げではありません。
息子も、あのスクールには入りませんでしたが、サッカーは続けています。合わない場所を無理に続けさせるより、安心できる場所でサッカーを好きでい続けられることの方が、長い目で見てずっと大切です。
まとめ
子どもの「コーチが怖い」は、指導内容の問題とは限りません。身体が大きい、声が大きい。それだけで怖いと感じることがあります。そして一度怖いと感じたら、褒め言葉も励ましも届かなくなります。
私自身、コーチとして「怖い」と言われた経験があります。悪意がなくても、意図が伝わらないことはあります。だからこそ、コーチが悪いのか子どもが繊細なのか、という二択で考える必要はありません。
子どもが怖いと言った時は、まずその気持ちを受け止めてください。何が怖いのかを一緒に探り、時間を待つか、環境を変えるかを子どもと一緒に考える。安心感があって初めて、子どもはサッカーに向き合えます。
「怖い」と言えたこと自体、子どもがあなたに本音を話せている証拠です。その関係があれば、どんな選択をしても大丈夫です。
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