「あの時やめなくてよかった。」
その言葉を、親子から直接聞いた時、指導者として本当に嬉しかった。
子どもが「辞めたい」と言った時、続けさせるべきか、辞めさせるべきか。多くの親御さんが悩むこの問いに、正解はありません。でも、続けることで大きく変わった子を、私は何人も見てきました。
今回は、そのうちの一人の話をしたいと思います。
ベンチで下を向いていた小5の子
その子と出会ったのは、小学5年生の頃のことです。
チームの試合に、ほとんど出場できていませんでした。ベンチに座ったまま下を向いている姿が、いつも気になっていました。
親御さんに声をかけて、家での様子を聞いてみると、あまり良くないとのことでした。サッカー以外の習い事でも、行ったり行かなかったり。気持ちが揺らいでいる時期でした。
辞めてしまうかもしれない。そう感じていました。
サッカーを楽しめる場所を作りたかった
そこで、私が個人的に参加しているフットサルに誘いました。
チームの活動とは全く関係のない、大人たちが集まって楽しむフットサルです。年齢も立場も関係なく、ただボールを蹴る場所。試合に出られる出られないも関係ない。
プレッシャーのない環境でサッカーをする機会を作ってあげたかった。ただそれだけでした。
その子は、そこでのびのびとボールを蹴っていました。
6年生で変わったこと
学年が変わり、私もその子の担当コーチの一人になりました。
6年生になってから、その子は変わりました。
いつもスタメンで出場するようになり、チームにとって欠かせない存在になっていました。ベンチで下を向いていた1年前が、嘘のようでした。
卒業後も、ほとんど毎回グラウンドに遊びに来ます。ジュニアユースへの進学も検討しているそうです。サッカーが生き甲斐になった、と親御さんが話してくれました。
「続けてよかった」と同時に感じること
ただ、私の中には別の思いもあります。
あの時期、気持ちが揺らいでいた時間。試合に出られず、下を向いていた日々。その時間も前向きにやれる環境があれば、もっと上手くなれたのではないか、と今でも思うことがあります。
基本技術の部分で、追いつけていない部分がある。それは事実です。
「続けてよかった」は本当のことです。でも同時に、続けている間の環境がどうだったか、それも問われていると思っています。
続けさせることと、続けやすい環境を作ることは、別の話です。
続けた方が良いケースとは
この経験をもとに、続けることに意味がある場合を整理します。
サッカー自体は好きだと感じている
辞めたい理由がサッカーそのものへの嫌いではなく、環境や状況への不満である場合、続けることで変化が生まれることがあります。
環境を変えられる余地がある
今のチームや状況が合っていないだけなら、環境を変えることで気持ちが変わることがあります。辞める前に、環境を変えるという選択肢を考えてみてください。
気持ちが揺らいでいる段階である
完全に気持ちが切れた状態ではなく、まだ迷っている段階であれば、少し時間をおくことで見え方が変わることがあります。
子ども自身が「もう少しやってみる」と言っている
最終的には子ども自身の言葉が大切です。親が続けさせたいのではなく、子ども自身がもう少しやってみると思えているなら、その気持ちを大切にしてください。
まとめ
続けることが正解とは限りません。辞めることが失敗とも限りません。
ただ、あの子が「やめなくてよかった」と笑顔で言う姿を見て、続けることで開ける世界があることも確かだと感じています。
大切なのは、続けさせることではなく、続けたいと思える環境を作ること。その違いを、あの子が教えてくれました。
お子さんが「辞めたい」と言った時、まず「なぜ辞めたいのか」を聞いてみてください。その理由によって、続けることの意味も変わってきます。
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