自主練は本当に必要なのか|5人の子どもを見て気づいたこと

親のサポート術

「自主練をたくさんすれば上手くなる。」

そう言われることがあります。でも実際には、毎日練習しているのに伸び悩む子もいれば、ほとんど自主練をしないまま中心選手になる子もいます。

この記事では、ジュニア年代の練習時間について公的機関が示している目安を整理したうえで、私が指導現場で置いている「1日1時間」という基準と、25年以上の中で出会った5人の子どもの話をお伝えします。

読み終えたとき、「量を増やすべきか」ではなく「どんな状態で練習しているか」という視点で、お子さんを見られるようになるはずです。

自主練を考える前に整理したい「練習時間」の目安

まず、練習時間について公的にどう示されているかを確認しておきます。

公的な目安は「1日2〜3時間」「週2日以上の休養」

スポーツ庁が平成30年にまとめた運動部活動の指針では、1日の活動時間は平日で2時間程度、学校の休業日は3時間程度とされ、学期中は週に2日以上の休養日を設けることが示されています。

これは中学校の部活動を対象としたものですが、その根拠になった日本体育協会(現・日本スポーツ協会)の資料では、ジュニア期について、週に1〜2日の休養日を設けること、週あたりの活動時間は16時間未満が望ましいことが示されています。

小学生年代にそのまま当てはまる数字ではありませんが、「上限の目安」として知っておく価値はあると思います。

練習量が増えれば伸びる、とは限らない

スポーツ庁と文化庁がまとめた指針では、過度の練習がスポーツ障害やケガのリスクを高め、必ずしも体力や運動能力の向上につながるとは限らないことが指摘されています。

ジュニア年代は骨が成長している時期です。同じ動きを繰り返しすぎると、膝やかかとに負担が集中することがあります。「量をこなせば上手くなる」という考え方には、こうした前提があることを知っておいてください。

私がチーム練習や習い事に置いている基準は「1日1時間」

ここからは、私自身が現場で置いている基準です。

小学生年代の場合、チーム練習やサッカースクールといった「大人が組んだメニューをこなす時間」は、1日1時間程度で十分だと考えています。

理由は3つあります。

1つ目は、集中が続く時間です。この年代の子どもが、頭を働かせながら質を保てるのは、そう長くはありません。

2つ目は、他の時間が必要だからです。学校、宿題、友達との遊び、家族との時間。サッカー以外の時間で育つものが、確かにあります。

3つ目は、疲労です。休めていない体で、新しいことは身につきにくくなります。

もちろん、練習量は人それぞれです。年齢や体力、チームの方針によって変わります。あくまで一つの目安として受け取ってください。

一方で、自主練は時間で区切らなくていいと考えている

ただし、自主練は別だと考えています。

集中できている状態、頭が回っている状態でやっている自主練であれば、いくらやってもいいと思っています。

自分のやる気や気持ちのノリに合わせて、練習したいならすればいいし、遊びたい時は遊べばいい。そのほうが、結果として長く続きます。

「やりすぎ」はよくて、「やらせすぎ」はよくない

私がいちばん大事にしているのは、この線引きです。

やりすぎは、オッケーです。夢中になって、気づいたら2時間経っていた。そういう自主練を止める必要はありません。

でも、やらせすぎはダメだと思っています。大人が決めた回数、大人が決めた時間、大人が決めたメニュー。それを子どもが「やらされている」状態でこなしているなら、時間が短くても長くても、あまり実りません。

同じ「1時間の自主練」でも、この2つはまったく別のものです。

現場で見てきた、量では説明できなかった5人の子ども

ここからは、私が実際に見てきた子どもたちの話です。

学校で一人ボールを蹴り続けていた子

学校に行くと、いつもサッカーで遊んでいる子がいました。習っているわけではないのに、いつもボールを蹴っている。仲間が帰った後も、一人で蹴り続けていました。

その子がチームに入った途端、大きな戦力になりました。

姉についてきただけの子

私が個人的にやっているフットサルに、姉についてきただけの子がいました。人数が少なくて、仕方なくやらされていた状態です。

最初は動かないし、声も出ない。それでも大人から褒められて自信になり、そのうち自分から来るようになりました。小5でチームに入った時には、チームの中心選手になっていました。

山に囲まれた場所で育った子

ずっと野球をやっていた子もいました。サッカーは友達と遊ぶ時だけ。家の周りは山だらけで、遊びに行くのにも何十分もかかる場所でした。

遊ぶものがない時は自分で作る。遊ぶ人がいない時は、一人で遊べることを探す。そうやって育ってきた子でした。小5の中頃にサッカーにのめり込んでからは、中心選手になりました。

教わった通りにやり続けた子

一方で、こんなケースもありました。

マーカーを買ってもらい、やることを教えてもらい、教わった通りに並べて、教わった通りに真似して、終わったら帰る。低学年からサッカーを習っているのに、伸び悩んでいる子がいました。

毎日付き添われてリフティングを続けた子

もう一人、家族に毎日付き添われ、時には泣きながらリフティングを続けていた子がいました。

最初は5回しかできなかったのが、半年後には200回を超えるようになりました。回数だけを見れば、大きな成長です。ただ、試合の中では、その力がまだ発揮できていないように見えました。

5人を見て気づいたこと

この5人は、ほんの一例です。半年後、1年後にどうなるかは分かりません。

それでも私が感じているのは、自主練の「量」よりも、「自分の中から出てきたものかどうか」のほうが、上達に大きく関わっているということです。

一人で蹴り続けていた子、自分から来るようになった子、山で遊びを工夫していた子。共通していたのは、誰かに言われたからではなく、自分の中から「やりたい」が出ていたことでした。

逆に、教わった通りにこなす練習や、泣きながら続けるリフティングは、形としては自主練に見えても、本人の中から湧き出たものではありませんでした。

私自身、以前は「もっとやらせたほうがいいのでは」と考えていた時期があります。でも、こうした子どもたちを見るうちに、量を管理することの意味が分からなくなっていきました。

今日から試せる3つのこと

考え方だけでは動きにくいと思うので、具体的な行動を3つ挙げます。

1. 「今日は何分やった?」を聞くのをやめてみる

時間を確認すると、子どもの中で自主練が「報告するもの」に変わります。代わりに「今日は何やってたの?」と、中身を聞いてみてください。

2. 夢中になっている時は、声をかけずに最後まで見る

ご飯の時間でも、あと5分だけ待ってみる。「集中が切れるまでやらせてもらえた」という経験が、次に自分から始める力になります。

3. 週に1日、サッカーをまったくしない日をつくる

スポーツ庁の指針でも週2日以上の休養が示されています。休むことは、サボることではありません。「やりたい」が戻ってくる時間だと考えてみてください。

よくある質問

Q. 自主練をまったくやりたがりません。声をかけたほうがいいですか。

A. 誘ってみるのは自然なことだと思います。ただ、断られたときに引けるかどうかが分かれ目になります。1回誘って終わり、くらいがちょうどいいかもしれません。

Q. チームのコーチから「自主練しなさい」と言われました。

A. 課題を伝えてもらえたと受け取るのが良いと思います。そのうえで、いつやるか、どれくらいやるかは、お子さんに決めてもらうのが続けるコツです。

Q. 兄弟で差が出ているのが気になります。

A. 同じ家庭で育っても、夢中になる対象もタイミングも人それぞれです。比べるより、それぞれの中で起きている変化を見てみてください。

まとめ

自主練の量が多ければ上達するとは限りません。スポーツ庁がまとめた指針でも、過度な練習がケガのリスクを高め、必ずしも力の向上につながるとは限らないことが示されています。

私がチーム練習や習い事に置いている基準は1日1時間程度です。一方で、集中して取り組めている自主練なら、時間で区切る必要はないと考えています。分かれ目は、やりすぎか、やらせすぎか。前者は問題なく、後者は実りにくいというのが、現場で感じてきたことです。

5人の子どもたちを見てきて気づいたのは、伸びる子に共通していたのが練習量ではなく、「自分の中から出てきたやりたい」だったということでした。

まずは今週、「今日は何分やった?」を「今日は何やってたの?」に変えてみてください。それだけで、見えるものが少し変わります。

お子さんの自主練に悩む時間は、それだけ真剣に向き合っている証拠だと思います。焦らず、その子のペースを一緒に探していきましょう。


【この記事を書いた人】

ぽこちパパ|Junior Football Base運営者

ジュニアサッカー指導歴25年以上。ブラジル・サンパウロでのサッカースクール設立・運営、Jリーグクラブスクールでの指導、女子チームや発達支援現場での活動を経験。現在はNPO法人を運営し、保護者支援や発達支援にも携わっています。

▶ぽこちパパのプロフィール
https://juniorfootballbase.com/profile/

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