子どもに期待するのは、親として自然なことです。でも、その期待が子どもの重荷になっていないか。「期待してるよ」と言った時の、子どもの一瞬の表情の曇り。頑張ってほしい気持ちと、プレッシャーをかけたくない気持ちの間で、伝え方が分からなくなっている方に向けて書きました。
コーチを始めた頃、スポーツ心理学の講習で聞いた一つの言葉が、私の子どもへの関わり方を根本から変えました。この記事では、その言葉と、期待との付き合い方、そして期待を押し付けずに形にする方法をお伝えします。読み終える頃には、期待そのものへの見方が変わっているはずです。
期待を押し付けない伝え方として、一般的に言われること
まず、よく言われる工夫を整理します。
「あなたのため」と言わない
「あなたのために言ってる」は、親の期待を子どもの義務にすり替える言葉だとされます。
結果ではなく行動に期待を向ける
「優勝してほしい」ではなく「最後まで走り切る姿が見たい」。本人がコントロールできることに期待を置く方法です。
期待を「予言」にしない
「あなたなら絶対できる」は励ましのようで、できなかった時の逃げ場を奪う言葉になることがあります。
子どもの目標と親の期待を分ける
親の夢なのか、子どもの目標なのか。主語を確認することが推奨されます。
どれも大切な視点です。ただ、私の場合は伝え方の工夫より手前で、期待そのものとの向き合い方が変わる出来事がありました。
「怒りは期待からくる」
コーチを始めた頃、スポーツ心理学の講習で聞いた言葉です。
怒りは、期待からくる。
なぜ子どものプレーに苛立つのか。「できるはず」と期待しているからです。なぜ言うことを聞かないと腹が立つのか。「言えば分かるはず」と期待しているからです。期待がなければ、そこに怒りは生まれません。
思い当たることばかりでした。試合中に熱くなる保護者も、練習で怒鳴る指導者も、根っこにあるのは期待です。期待は愛情の形をしていますが、裏返った瞬間に怒りに変わる。そして子どもは、期待そのものより、裏返った時の怒りに傷つきます。
この言葉を学んでから、私はできる限り、期待を遠ざけるようにしてきました。
期待するより、信じる
期待を手放すというと、冷たく聞こえるかもしれません。子どもに何も望まないのか、と。
そうではありません。期待の代わりに置いているものがあります。
信じることです。
期待と信じるは、似ているようで正反対です。
期待は、「こうなってほしい」という親の側の絵です。子どもがその絵からずれた時、失望や怒りが生まれます。
信じるは、「この子はこの子の力で育っていく」という子どもの側への信頼です。絵がないので、ずれることがありません。今日結果が出なくても、揺らぎません。
「期待してるよ」と「信じてるよ」。かける言葉としては一文字違いですが、子どもが受け取る重さはまったく違います。期待は応えるもの、信じるは支えられるものだからです。
期待は、言葉ではなく環境に変える
とはいえ、親として「こうなってほしい」が消えるわけではありません。私にもありました。
息子には、左足も使える選手になってほしいと思っていました。
でも、それを言葉にしたことはありません。「左足も練習しなさい」と言ったことは一度もありません。
代わりにやったのは、息子が3〜4歳の頃、遊びでボールを蹴る時に、ボールを左足側に出し続けることでした。それだけです。息子は遊びの中で自然に左足を使うようになり、今では両足を使えます。
期待は、言葉で子どもに渡すと重荷になります。でも、環境に変換すれば、子どもは気づかないまま、その方向に育っていきます。 押し付けない伝え方の究極は、伝えないで形にすることかもしれません。
それでも期待が漏れそうになったら
期待を完全に消すことは、親には無理です。私も、試合を見ていて「今のはできたはずだろう」と思う瞬間はあります。
そんな時に思い出すのが、やはり「怒りは期待からくる」です。
苛立ちを感じた瞬間、「あ、今、自分は期待していたんだな」と気づく。それだけで、怒りを子どもにぶつける前に一呼吸置けます。怒りは消せなくても、出どころが分かっていれば、扱えるようになります。
まとめ
親の期待を押し付けない伝え方の出発点は、伝え方の工夫ではなく、「怒りは期待からくる」と知ることでした。期待は愛情の形をしていますが、裏返れば怒りになり、子どもを傷つけます。
だから、期待するより、信じる。「こうなってほしい」という親の絵を手放し、「この子は育っていく」という信頼に置き換える。それでも残る「こうなってほしい」は、言葉ではなく環境に変えて形にする。
お子さんに苛立ちを感じた時は、思い出してみてください。その怒りの出どころは、期待です。気づけた瞬間から、期待との付き合い方は変わり始めます。
▼ この記事と一緒に読まれています
- 続く目標設定のコツ|「リフティング1000回」で挫折した息子の話
- 成長を促す親の関わり方|まず、親が自分の人生を生きること
- 子どもの意思を尊重するとはどういうことか
- なぜ親は試合後に厳しく言ってしまうのか?
- 結果より過程を認める伝え方
▼悩み別ガイドはこちら
・親の声かけ完全ガイド ジュニアサッカーの親の声かけ完全ガイド|子どもが伸びる関わり方とは「何て声をかければいいんだろう?」ジュニアサッカーをしていると、多くの保護者が一度は悩みます。試合でミスをした時。負けて…



コメント