親が見ていた試合と、子どもが見ていた試合は、同じものなのでしょうか。
私は高校生の頃、同じ映画を見た友達の感想が、たった一言だったことに驚いた経験があります。同じものを見ても、受け取るものは人によって違う。それだけの話でした。
試合も、たぶん同じです。この記事では、試合後の最初の一言をどう選ぶかを書きます。毎回、何と声をかければいいのか迷っている方に向けた内容です。
最初の一言は「楽しかった?」でいい
結論から書きます。試合後の最初の一言は、評価ではないほうがうまくいきます。
「楽しかった?」でも「どうだった?」でも構いません。共通しているのは、点数をつけていないことです。
なぜこれがいいのかというと、子どもが答えを選べるからです。
「今日は勝てた?」と聞けば、返ってくるのは結果だけです。「あそこのミス、どうしたの」と聞けば、返ってくるのは言い訳か沈黙です。
でも「どうだった?」なら、その子がその日いちばん覚えていることが出てきます。
試合直後の子どもは、意外と冷静ではない
大人から見ると、子どもはケロッとしているように見えることがあります。
でも中身は違います。
うまくいかなかった場面を何度も思い出していたり、交代のタイミングを気にしていたり、コーチに言われた一言が引っかかっていたりします。表情に出ていないだけです。
その状態のときに評価の言葉を受け取ると、頭の中の再生がもう一周増えます。
だから最初の一言は、内容を確認するためのものではなく、その子の状態を確かめるためのものだと考えたほうが、うまくいきます。
同じ映画を見ても、受け取るものは違う
高校3年のとき、友達と『もののけ姫』を見に行きました。
翌日、別の友達に感想を聞きました。その友達は自分より成績も良くて、いろいろ深く考えるタイプだと思っていました。
返ってきたのは、こんな言葉でした。
「自然って大事ってことだろ」
それで終わりでした。
正直、意外でした。もっと違う話が出てくると思っていたからです。
でもあとになって、そういうことじゃないなと思い直しました。同じものを見ても、受け取るものは人によって違う。ただそれだけの話でした。
試合も同じだと思います。
親が気になったミスを、子どもは覚えていないことがあります。逆に、誰も見ていなかった一回の守備を、本人だけがずっと覚えていることもあります。
親が見た試合の話から始めると、子どもが見た試合は出てきません。順番を逆にするだけで、話は変わります。
試合に出られなかった日こそ、最初の一言が効く
出番がなかった日、親も何と言っていいか分からなくなります。
触れないほうがいいのか。励ましたほうがいいのか。どちらも不自然になりそうで、結局黙ってしまう。
このとき一番避けたいのは、いつもと態度を変えることです。
出た日は明るく話しかけて、出なかった日は静かにしている。子どもはこの差にすぐ気づきます。そして「試合に出た日じゃないと、うちの人は機嫌がよくない」と学習します。
出ても出なくても同じ聞き方をする。それだけで、出られなかった日の重さがかなり変わります。
良い声かけは、そのあとの会話を増やす
最初の一言がうまくいくと、副産物があります。
子どもが自分から話すようになります。
これは、その日だけの話ではありません。「この人に話しても評価されない」と分かっている相手には、人は安心して話します。逆に、話すたびに何か言われる相手には、だんだん報告しなくなります。
高学年になると、この差がはっきり出てきます。話さなくなった子の家では、たいてい何年か前から、最初の一言が評価から始まっていました。
親が目指したいのは、安心できる場所
コーチは、評価する人です。それが仕事なので、それでいいと思っています。
だからこそ、家まで評価の場所になると、その子には逃げ場がなくなります。
うまくいかなかった日に、普通にご飯が出てきて、普通に明日の話をする。それだけで、子どもは次の週にまたグラウンドへ行けます。
家の役割は、コーチと同じことをすることではありません。
最初の一言は、質問でいい
試合後の最初の一言は、評価ではないほうがうまくいきます。「どうだった?」で始めると、子どもが見ていた試合のほうが出てきます。
これができると、会話が続きます。親が気になっていた場面ではなく、本人が気になっていた場面から話が始まるからです。
私が映画の感想で驚いたときと同じで、同じものを見ていても、残っているものはまったく違います。あのとき「そういう見方もあるのか」と思えたことは、その後、子どもの話を聞くときにずっと役立っています。
今日は、車に乗った最初の30秒だけ意識してみてください。「惜しかったな」でも「よく走ってたな」でもなく、「どうだった?」から始める。それだけです。
聞かれ続けた子は、そのうち自分から話し始めます。
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