「あの子より上手そうなのに、なぜ出ていないんだろう。」
試合を見ていて、そう感じたことはありませんか。技術だけでは説明できない、出ている子と出ていない子の違いが、行動の中に表れていることがあります。この記事では、指導現場で見えてきたその違いと、姿勢ひとつで進路が変わってしまった、ある教え子の話をお伝えします。
出ている子と出ていない子、技術以外に見える違い
試合を見ていると、「なぜこの子が出ていないんだろう」と感じることがあります。
コーチは、単純に技術が高い順に選手を選んでいるわけではありません。試合は仲間と協力してプレーするものです。だからこそ、技術以外の部分にも差が表れます。
代表的なのが、ボールを持っていない時の動きです。
味方を助ける動き。スペースを作る動き。守備への切り替え。ボールを持っている時間は、試合全体のごく一部です。それ以外の時間にどう動いているかが、実は評価に大きく関わっています。
もう一つ、見落とされがちなのが「姿勢」です。
これは、「全力で走る」「声を出す」といった気持ちの姿勢だけの話ではありません。文字通りの、体の姿勢のことです。
フットボールに特化したトレーニング指導を行うフットボールスマートアカデミーは、猫背の状態が続くと視野が狭くなり、プレーの選択肢が減ることを指摘しています。指導者向け情報サイトのジュニアサッカー大学でも、体の向きを整えることが視野の確保につながり、スペースや相手の位置を把握しやすくなると解説されています。
姿勢が悪いと、単に見た目の問題ではなく、実際に見えている景色が狭くなります。視野が狭ければ、良い判断も、良いパスも生まれにくくなります。
身体能力が高い子がいないチームで、何を見ていたか
2回目に担当したのは、女子のチームでした。夏の合宿から入りました。
正直に言うと、身体能力が特別高い子はいませんでした。走る速さでも、体の強さでも、他のチームに勝てる要素は多くありませんでした。
だから、探すものを変えました。
大きな声を出せる子。地味な練習でも手を抜かない子。ミスをした仲間に最初に声をかける子。そういう小さな良さを見つけて、本人に伝え続けました。
しばらくすると、子どもたちの表情が変わってきました。そしてその年、チームとして初めて、県大会の予選を突破しました。
コーチが見ているのは、うまさだけではありません。少なくともあのとき、自分は「うまさ」をほとんど見ていませんでした。
ベッカムに憧れて、キックフォームに癖がついた子の話
以前指導していた子に、独特なキックフォームの選手がいました。
おそらく、当時活躍していたベッカム選手の真似をしていたのだと思います。かっこいいフォームでしたが、その分、体の使い方に癖がありました。
中学生の頃、姿勢の悪さについては伝えていました。ただ、強くは言いませんでした。彼なりの「かっこよさ」を追求するのも、悪いことではないと思っていたからです。
中学生のうちは、体格でなんとかなっていました。多少姿勢が崩れていても、それを補えるだけの体の強さがありました。
しかし、高校に入ってから状況が変わりました。周りとの体の当たりについていけなくなり、姿勢はますます猫背になっていきました。周りを見る時も、覗き込むような姿勢になっていました。
視野が広く持てなくなり、プレーは伸び悩みました。結局、大きく花開くことはありませんでした。
個性を尊重することと、伝えることは両立できたはずです
今振り返ると、彼の「かっこよさ」を尊重したい気持ちは、間違っていなかったと思っています。
ただ、姿勢が視野に影響し、それがプレーの選択肢に直結するということを、もっと具体的に伝えられたのではないか、とも思っています。
好きなスタイルを否定せずに、体の使い方の理屈だけを伝える。その両立が、できたはずだと感じています。
今日から試せる3つのこと
1. 試合中、ボールを持っていない時の動きを見てみる
技術的な派手さより、味方をどう助けているかに注目してみます。
2. 姿勢を、気持ちの問題だけにしない
猫背や下を向く癖は、性格ではなく、体の使い方の癖であることが多いです。
3. 好きなスタイルを否定せず、理由だけ伝える
「そのフォーム、かっこいいね。でもこうすると、もっと見えるようになるよ」と、両方を伝えてみます。
その個性は、何かを犠牲にしていないでしょうか
好きな形、好きなスタイルを大切にすることは、悪いことではありません。
ただ、それが原因で、見えるはずのものが見えなくなっているとしたら。一度、確かめてみる価値があります。
よくある質問
Q. 姿勢の癖は、何歳からでも直せますか。
年齢が上がるほど、癖として定着しやすくなります。ただ、意識して繰り返せば、変わっていく部分でもあります。
Q. 子どもの好きなスタイルを、否定せずに直すにはどうすればいいですか。
スタイルそのものではなく、「見え方」「体の使い方」という理屈の部分だけを伝えると、本人も受け入れやすくなります。
まとめ
試合に出ている子と出ていない子の違いは、技術だけでは説明できないことがあります。ボールを持っていない時の動きや、姿勢といった、見落とされがちな部分に差が表れることがあります。
以前指導した、憧れの選手のフォームを真似ていた子は、姿勢の崩れが視野の狭さにつながり、高校で伸び悩みました。個性を尊重したい気持ちと、体の使い方を伝えることは、本来両立できたはずだと今は思っています。
今日、もし試合を見る機会があれば、ボールを持っていない時の動きに注目してみてください。
技術だけでなく、そうした部分にも、成長のヒントが隠れています。
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