試合に負けた日、ミスをした日、仲間と何かあった様子の日。子どもが明らかに落ち込んでいるのに、何と声をかければいいか分からない。励ませば空回りしそうで、黙っていれば冷たい親のようで、結局どっちつかずのまま夜になってしまう。そんな経験のある方に向けて書きました。
私は立ち上げから関わった女子チームの指導で、落ち込む選手と何度も向き合ってきました。そこでの体験は、自分の人生にとって大きな学びになっています。この記事では、その中で身についた「見立てる」という考え方と、そもそも声が届くための土台の話をお伝えします。読み終える頃には、「何を言うか」より先にやることが見えているはずです。
落ち込んでいる子への対応として、一般的に言われること
まず、よく言われる方法を整理します。
無理に聞き出さない
「どうしたの?何があったの?」と質問攻めにすると、子どもは心を閉じやすくなります。
そばにいることを伝える
言葉で解決しようとせず、「いつでも聞くよ」という姿勢を見せることが推奨されます。
落ち込む気持ちを否定しない
「そんなことで落ち込むな」「切り替えろ」は、感情そのものを否定する言葉になってしまいます。
生活のリズムを保つ
食事や睡眠など、いつも通りの日常を保つこと自体が回復の土台になるとされます。
どれも正しいと思います。ただ、私が現場で身につけたのは、もう少し順序立てたプロセスでした。
女子チームで学んだ「見立てる」プロセス
落ち込んでいる選手に気づいた時、私がやってきた流れはこうです。
①見立てをつくる
まず、落ち込んでいるように見えるのは事実か。事実なら、原因は何か。プレーのことか、仲間関係か、家庭のことか。自分なりの仮説を立てます。
②情報を得る
親に聞いたり、友達に聞いたり。見立ての裏付けになる情報を集めます。友達が言わないことも多々あります。ただ、「言えないことがある」と分かること自体が、大事な情報です。
③見立ての確認
集めた情報と本人の様子を照らして、仮説を修正します。
④アプローチ方法を決める
声をかけるのか、待つのか、環境を少し変えるのか。ここで初めて行動を選びます。
大事なのは、声をかけるかどうかは最後に決めるということです。多くの場合、心配になった瞬間に声をかけたくなります。でも、見立てもなく声をかけると、的外れな励ましになったり、触れてほしくない部分に触れてしまったりします。
「話してきてよ」のサインを待つ
もう一つ、大切にしてきたことがあります。
人と人の関係なので、本人が話したいと思えば話してきます。そうでなければ、話してきません。それを無理にこじ開けることはできません。
こちらが心配していることは、態度で伝わります。実際、心配しているのだから、それでいいのです。
そして時折、子どもの側から「話してきてよ」という空気を出してくる瞬間があります。近くをうろうろする、意味もなく話しかけてくる、目が合う回数が増える。そのサインを感じたら、選択肢を与えながら近寄ります。
「今話す?後にする?」「歩きながらにする?」。話すこと自体を強制せず、話し方を選ばせる。それだけで、子どもは口を開きやすくなります。
結局、普段の関係がすべて
ここまで書いてきて、身も蓋もないことを言います。
落ち込んだ時に親ができることは、普段の関係で決まります。
普段から話せる関係。対等な関係。価値観を押し付けない関係。話した後に「話せてよかった」と思える経験の積み重ね。それがないと、いざという時にこちらができることは、ほとんどなくなります。
我が家の場合、サッカーのプレーについては、とにかく褒めます。嘘は言いません。良いところを探して、本当のことだけを伝えます。その積み重ねのおかげか、今のところ、何かあれば話してくる関係になれていると思います。
偉そうに言えるのは、今だけかもしれない
正直に付け加えます。
ここまで書いたことが言えているのは、今だけかもしれません。思春期は、これからです。戦々恐々としています(笑)。
どれだけ関係を積み上げても、話してくれなくなる時期は来るでしょう。その時はその時で、「見立てて、待つ」の繰り返しになるのだと思います。完璧な親などいないので、一緒に構えすぎず、やっていきましょう。
まとめ
落ち込んでいる子どもに親ができることは、「何を言うか」ではありません。まず見立てをつくり、情報を集め、確認してから、アプローチを決める。声をかけるかどうかは、最後に決めることです。
そして、子どもの「話してきてよ」のサインを待ち、選択肢を与えながら近寄る。その繊細さが、閉じかけた心の扉を守ります。
ただし、それができるのは普段からの関係があってこそ。話せてよかったと思える経験を、日常で積み上げておくこと。それが、子どもが落ち込んだ日のための、一番の準備です。
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